第41話 あなたはどうしたいの? 後編

「だったら助けに行ってきなさい」


 カーテン代わりの布を開いて私は入口のスペースに入る。

 直線状ほとんど私と変わらない場所にいたアルが驚きの顔をこっちに向けている。だけどその目元は潤んでいるようにも見えた。

「行けません。護衛を継続できなくなります」


 表情を戻してはっきりと言い切った。頑固な騎士復活だ、さっきまでとは全然違う。ここでさっきみたいに感情に流されて助けに行ってくれる方が一番はやかったのに。


「だったら、私が一緒に行くわ。それでいいでしょ」

「何を言っているんですか! そんな馬鹿な事できるわけがないでしょう」

「あなたが護衛をしながら助けに行ける唯一の方法でしょ。それにあなたが守ってくれてるから大丈夫」

「それでも駄目です。何を言い出すんですか」


 意地でも行かないらしい。そりゃ護衛対象がわざわざ危険地域に行くのも馬鹿な話なのは分かる。でもアルを連れて行くにはそれしかない。とりあえずアルが下層に行ってくれるように説得する、それが今の私がするべきこと。


「そしたら情報だけでも集めましょう。それだけでもするべきだわ。高層出身のあなたしかもってない情報もあるんじゃないの? それを誰かと共有したら勝率も変わるんじゃないかしら」


 唇を噛みしめるようにしてアルが唸る。落ちかけてるわね。自分を納得させるための理由を探している表情だ。事は違っても私にも似たような経験はあるわ。

 窓を打つ雨が強くなってきているのか打ち付ける音がさっきより大きく聞こえてくる。


「ホリナさんはどうするんですか?」


 その質問は既に予測済み。そしてそれに対する答えも。


「薬が効いている間は大丈夫。信じましょう。それにあなたと合流するまでの間も何もなかったわ。落ち着いてきてる今ならもっと大丈夫なはずよ」


 ホリナには悪いけど今はこっちを優先させてほしい。私自身危ないところに行くことをホリナは怒るでしょう。ちゃんと帰ってきたらいっぱい怒られるわ、だから今はごめんなさい。


「僕は……あなたの護衛です。あなたについていくだけです。それだけです」

「それで充分よ。出かける準備だけするからそれだけしたら行くわよ」

 それでいい。私が飛び出した所にあなたがついてくる。それだけで今はいいの。

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