第40話 あなたはどうしたいの? 前編

「あなたはどうしたいの?」


 手を伸ばすことを辞めて、アルに問いかけた。

 すぐに返事がこない。考えているのか、それとも言えないのか、私には判断できない。それでも私としては『言えない』方が良い。言えないだけであれば、答えはもう決まっているのだから。


「その話を聞いて心配するだけでいいの? 野盗崩れのやつらに反抗したらヤンは殺されるかも知れないのよ」


 ヤンが助けに来てくれた時、男たちは短刀を躊躇なくヤンに向けた。そんな男達の集まりならきっと全員が武器を、殺傷力のある武器を向けて本気で振るってくるに違いない。


「ヤン1人が行ってそんなに勝率が上がるんなら、あなたも行ったらもっと上がるんじゃないかしら。それにあなたが人を連れて行けば絶対に勝てるんじゃないの?」


 ここまで言っても返事がない。そこに居るのはなんとなく人の気配で分かる。聞こえてないはずはない。お願いアルあなたの答えを聞かせて。


「僕は……助けに行きたい。彼がそれを望まなくても。このままだと見殺しにするようなものだとは分かってる。だけど! 彼からあなたの事を頼まれた! それも事実だ!」


 決して怒っているわけじゃない、自分に言い聞かせているだけ。私はそう感じる。


「だから僕は行けない。あなたを護衛することが彼の信頼に応える事なんです。分かってください。それに人を連れてはいけない。下層を助けることに賛同してくれる知り合いが僕にはいません」


 『分かってください』それは私と自分に向けた言葉だ。

 アルは『行きたい』と言ってくれた。だったら私ができる事は決まっている。

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