第36話 ヤンとアル 後編
「それでは僕たちも出ましょう。可能な限り急ぎますが、一旦家へ寄らせてください。支度だけしますので」
私とアルはお店を出てアルの家に再度向かった。
アルの家の中に通された私は待合室で最初にドアを叩いた時にしていた声のメイドさんにお茶を出されていた。
ホリナよりも若いメイド。多分私の3つくらい上だろうか。幼さの中に品のあるメイド。
「お茶ありがとうございます。美味しいです」
お世辞ではなく、純粋に美味しい。流石は名のある家のお茶は美味しい。ホリナが入れてくれるお茶の次に美味しいと思った。
「ありがとうございます」
腰から上半身を折って頭を下げてはっきりとした声で返された。会話が続かない。あくまでメイドで客人に対しての当然の態度なんだと頭の中で納得した。
ホリナも客人に対してはあんな対応なのかもしれない。元気になったら聞いてみよう。
そう考えると押し殺していた心配な気持ちがあふれてくる。薬が効いているとはいえ、大丈夫なのか、勝手に動いていないかが心配になる。
アルの到着がもどかしく感じる。心の中でつい「早く、早く」と急かしてしまう。
「お待たせしました。参りましょう」
待合室のドアが開くとアルが入ってきた。交流会で会った時に来ていた白ベースの服、腰には剣が携えられていて、茶色の鞘が彼の白い服を際立たせる。
「えぇ、早くいきましょ」
アルを連れて待合室を飛び出した。
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