第34話 ヤンとアル 前編

「どなた様でしょうか?」


 扉越しに聞こえる声は女性だった。恐らくお手伝いさんだろう。


「私はフランソワ=ソボールと言います。アル=レイトを訪ねて参りました。いらっしゃいますか?」

「確認してまいりますので、しばしお待ちを」


 ドアの前で2分ほど待っているとドアがゆっくりと開くと学校を案内してくれたアルがいた。


「フランソワ様驚きました。さぁとりあえず中に入ってください。雨で外は冷えるでしょう」


 私の顔を見て問いかけた後、私の後ろにいるヤンに気づいた。


「アル話がある。ちょっと時間を取ってくれ。俺がいる、外の方がいいだろ」

「僕は自分の部屋でもいいと思うよ」

「駄目だ。お前の家以外がいい。俺が落ち着かねぇ」


 「分かったよ」と言いながらアルは傘を持って家の中から出てくる。私は2人のやり取りをただただ見ているしかなかった。少し置いてけぼり感がにじみ出ているのが自分でもわかる。

 私たちはアルの家から少し離れた小さな喫茶店に入っていた。本当に小さく私たちの座っているテーブル以外にもう1つ同じテーブルがあるだけのシンプルなお店。アル曰く、落ち着いて話をするならここがおすすめらしい。

 外で冷えた体を温めるためにそれぞれ温かい飲み物を注文した。飲み物が来る前に会話を切り出したのはアルだ。


「それでフランソワ様まで連れて、君は何をしているんだ。まさか迷惑をかけているんじゃないだろうね」

「俺はその迷惑を払った方だ」

「そうなの。とりあえず今日合ったことを話すわ」


 なんで私がこの街にいるか、なんでヤンと一緒に行動しているのか、今日私自身に何があったのかを説明した。最初は世間話程度で聞いていた態度のアルの表情が少しずつ堅くなっていく。

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