第33話 もう1人の護衛
傘を射して歩くこと20分ほどたったころには私たちは高層についていた
目の前に広がる家は全て一軒家で壁も綺麗に装飾されている。窓もドアも綺麗でさっきまでの街並みとは全然違う風景が広がっている。
雨でなければもっと輝いて見えたんだろう。
「順番交代だ。あんたが先に歩いて入ってくれ。俺はそれについていく」
「分かった。けどなんで?」
「俺が下層の人間でここは高層だ。簡単だろ。そんでもってあんたはお嬢様。俺はその付き添いってことだ。まだ説明はいるか?」
「なんとなく分かった。やっぱりそういうのがあるのね」
「当たり前だ。あんたみたいなのが稀なんだ」
道を歩く人がこっちを見てくる。私じゃない。ヤンの方をみんなは見ている。
「気にすんな。慣れっこだ」
私が振り返ると笑うように言った。下層という場所と高層という場所の扱いの差を私は今日一番に実感している。
「あそこだ」
そう言って指を伸ばした先には大きな白い家があった。門とドアがここから見える。庭には花が植えてあって、この雨の中でも明るい庭を演出している。うっすらとだけど見覚えがある。あれはアルの住んでいる家だ。アルルートで背景になっていたのを覚えている。色とりどりの花が植えられた庭は印象深い。
「護衛ってアルだったのね」
「アルの家知ってんのかよ。どこまで知ってんだか恐ろしいな」
「でも私はヤンの家は知らないわ」
「知らなくていいよ。ここみたいにきれいな所じゃないしな。ほらあそこを訪ねてアルに会うぞ。あいつどうせ暇だろう」
「その自信に満ちた言葉は失礼じゃない?」
「事実だろうに」
肩をすくめて言う。この2人だからこその言葉なのかもしれない。この2人の関係性が少し羨ましい。
私はヤンに促されてアルの家の門をくぐってドアをノックした。
数回のノックの後に奥から人の気配が近づいてくる。
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