第31話 黒いヒーロー 後編
「でもな今回はそうじゃない。狙われたのはあんただ。フランソワ」
「えっ。私が?」
「可能性としては高いでしょう」
お医者様もヤンに同意するように首を縦に振った。
「なんで私が?」という疑問が浮かぶ。
「分かんねーのか。あんたが金持ちの娘だからだ。それで護衛のメイドを動けなくした。それだけだろ」
単純明快な答えだった。ヤンはそれもわからない私に腹を立てている、言葉がいつもより強い。
「本当は早く街を離れた方がいいかもしれないが、この方の毒は動かすと体に回る危険性がある。だから毒が引くまでこの宿を出ない事をおススメします」
「だそうだ。だからここを出るなよ。分かったな」
「それだけでは相手が何をしてくるかわからない。だからヤンを護衛に置いておきなさい」
「は? 俺はそんな暇じゃねーよ。俺はこのままおさらばさせてもらうぜ」
「君の性格だとほっとけないだろ。それに君の事を思っての……」
「いらねぇ。余計なおせっかいだ」
そういって目をそらして、ヤンはそのまま部屋を出ようとする。
「ヤン!!」
お医者様の一喝が部屋に響いた。さっきまでのお医者様からは想像できない声の荒げ方だった。
「分かったよ。でも俺は本当に忙しい。だから代わりの護衛を置く、それが最大の譲歩だ。これ以上は何も言うな。フランソワもとりあえずついてこい。あんたがいなきゃ頼めない。メイドさんは宿の人に言ってこの部屋にはあんた以外誰が来ても入れないようにしてもらっとけ」
その言葉に誰からの返答もなかった。お医者様は安堵の顔をした後に心配そうな顔をした。
「ほら行くぞ。部屋さっさと締めていくぞ。忙しいんだよ」
乱暴な言葉を残してヤンは部屋を出た。私とお医者様も追いかけるように部屋を出た。
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