第21話 ホリナの想い 後編
「お嬢様は私が邪魔ですか?」
沈黙の空気を先に破ったのはホリナだ。それもさっきのような鋭い言い方ではない。鋭さの中に悲しみの声が混じったような辛そうな声をひねり出す。
「ごめんホリナ。そんなつもりはないの。ただ、ただね。いつも私の身の回りの支度をしれくれてる2人が本当に大丈夫かなって思うだけなの。それは分かってほしい」
私とホリナの意見は永遠に平行線になっている。それはお互いがお互いを思っての意見。だからお互い譲ろうとはしない。
「1つ誤解しないで頂きたいのですが、少なくとも私は楽しく、自分の意思でお世話をさせて頂いています。お嬢様の言葉で言うならこれが『趣味』なのです」
さっき一瞬感じた悲しみの声はもうそこにはない。
「なので、お休みをいただく方がしんどいかもしれません。生活のサイクルが崩れますので」
淡々とホリナが言葉を紡いでいく。
「それに働きづめではありません。私もアレンも適度に休みながら、サボりながらお仕事をしていますよ。今最後に聞いたことは旦那様には内緒にしておいてくださいね」
そう言い切ったホリナは少し笑っていた。
「分かったわ。そこまで言われたら私は何も言えないわ。そうね、だったらホリナ私について着て頂戴。ただべったりは駄目よ! 適度に離れて私を守ってね。それくらい私の専属メイドなんだからできるわよね」
私は観念して彼女の言い分を飲んだ。さっきの笑顔のお返しに今度は私の笑顔をホリナに返す。
ここまで言ってくれているのにそれを無下に扱うことは私にはできなかった。
「えぇ、もちろんです。私がしっかりと楽しめるようにお守りいたしますお嬢様」
「ありがとう……ホリナ」
「アレンには私から聞いてみましょうか?」
「私から直接言うわ。私から言わないと意味ないもの」
馬の手入れをしていたアレンに聞くと答えはホリナと一緒だった。彼の趣味は馬の手入れと馬に乗ること、馬車を運転することだそうだ。仕事内容が趣味みたいなものらしい。だから彼の『ホリナ10倍はゆっくりサボってますよ』はあながち間違いではないのかもしれない。
こうして私のアリスと街に遊びに行く約束にはお忍びでのホリナも同行になった。
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