第6話 ヒーロー!ヤン登場

 ヤン=ルール。アリスの一つ上の年齢で、騎士学校には珍しい型に嵌らない柔軟な剣の腕と適当さで問題児の一人として扱われている攻略キャラの一人。

 同じく攻略キャラのアル=レイトとは親友で、まじめで堅い性格のアルとは性格こそ真逆だが、相棒とも言われている。

 どっちかのルートに入ると本人じゃなくて、相方から祝福されたりでそっちに泣かせされるイベントが多くて、どっちがメインルートなのか謎になることが多かったわね。


「わ、私の名前はフランソワ=ソボール。あなたの事は有名だから知っているわ! というより知らない人の方が少ないわよ」

「年齢は?」

「15よ。あなたの一つ下ね」

「だったら今年入ってきたばかりだろ。それでも俺の事を知ってるもんなのか? まだこっちとの交流日もまだのはずだから、名前は聞いたことあっても顔は分からないだろ」


 完全に疑惑の目を向けられている。そりゃいきなり出てきて自分の名前言われたら私も怖いわ。

 とりあえずなんとか疑惑の目を外さないと話が進まない。頑張れ、考えろ私。


「ソボール家。領主の娘たるもの、入る前から将来の近衛騎士候補の情報くらい集めているわよ。当たり前じゃない」


 嘘じゃないわ。どんだけやりこんだと思ってるのよ。情報だけは良く持ってるのよ。

好きな食べ物から交友関係までよく知っているわ。

 それでも疑惑の目は外れない。むしろ逆に怪しんでる気がするのは気のせい……?


「領主の娘さんがそんな地面に手足つけてでてくるもんかね」

「そうね。ありえないわよね。だから一旦そっちに出てもいいかしら。結構きついのよこの体勢」


 ヤンの言うとおりね。貴族、ましてや領主の娘がこんなはしたない恰好はしないわ。そういう世界よね。ゲーム中に穴を潜る所を見られなかったアリスは良かったわね。初対面これだったら多分ゲームはそこで終わってたわ。

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