第7話

「さて、先ほど話した件ですが、やはり私が思った通りの結果になりましたね。では、約束はしっかりと守ってもらいますよ、高田大臣。」

「あぁ、分かっている。しかし、我々の想像以上の結果が出たものだな。今回の結果があれば簡単に法整備が進められそうだ。」


高田大臣は非常に満足げな顔をしていた。


「では、俺は今回の動画と誹謗中傷のコメントを持って、正式に被害届も出してくる。今回の件は、総理大臣を始めとして各関係省庁とも全て話を通してあるものの、一応の手続きを踏んでおかないと後々、面倒な事になりかねないからな。」

「しかし、ネットを監視し国民の言動を制限する為に、本当に死ぬ人間として死刑囚を用意するとは思わなかったですよ。そのおかげでリアリティーが出ましたが、本当に人が死ぬ瞬間をネットとはいえ配信してしまって良かったんですか?」


「あぁ、そこは意見が分かれたが、まぁ顔を隠せば問題ないだろうと。最悪、何か問題があったとしても顔さえ映っていなければ、人間ではなく人形だったと言い訳だって出来るからな。」

「なるほど。まぁ、法整備を期待してますよ。」


俺は高田大臣との会話を終え、チームメンバーとも解散し帰路に着いた。


事務所に帰り、SNSの様子がどうなっているかが気になりアプリを開いたところ、今日のサイトに関する話題と共に俺の名前が話題に挙がっていた。顔写真と共に俺が住んでいる家も既に特定されていた。案の定、家の前にはマスコミや野次馬、抗議団と思われる連中が大挙している様子も一緒にSNS上に挙げられていた。


「さすがネットに住み着く正義感気取りの特定屋は仕事が早いな。と同時に、あれだけ誹謗中傷で痛い目にあった連中を見ていたハズなのに、結局、安全圏だと分かっている場所では何も変わらないんだな。」


俺はソファーに横になりながら、独り言を呟いていた。


すると、事務所のドアを叩く音がした。


「こんな時間に一体、誰だ?」

俺は受付に設置している監視カメラの映像を確認すると、見たこともない体格の良い二人組の男性が立っていた。


「早速、口封じに来たか。政治家ってのは本当に自分の保身しか考えていないんだな。さて、ここからどうやって逃げるかな。」


俺は事務所に逃げ場がない事を確認したのち、仕方なく受付のドアを開いた。


「さて、俺たちがここに来た理由に察しは付いているようだな。頭の良い人間を相手にするのは、多くの面倒なステップを省くことが出来るから助かるよ。じゃあ、逝こうか。」

「最期に一本、タバコを吸ってきても良いかな?」

「いや、ダメだ。お前の最期の希望を実現させてやるほど俺たちは優しくもなければ、暇でもない。逝くぞ。」

「分かった分かった。」


俺は二人組の男に両脇をがっちりとガードされた状態で事務所を後にした。

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