ゲームの設定

藤村 「インディーのゲームを作ってさ。どうにか形になってきたんだけど、ちょっと見てくれる?」


吉川 「すごいな。ゲームとか作れるんだ?」


藤村 「まぁ、ある程度ツールは揃っていてさ、そういうのを組み合わせてできるんだけどそこにオリジナリティをどう詰め込むかみたいな感じだから」


吉川 「へぇ」


藤村 「俺のは特にストーリー性を重視して、世界観からも重厚な感じを出してる。一般的なゲームメーカーが作るゲームってどうしても大多数にリーチしなきゃいけないからカジュアルな感じになりがちなんだよな。この辺りがインディーならではって感じで」


吉川 「あ、すごい。ムービーとかから始まるんだ。思ったより全然しっかりしてる」


藤村 「主人公はある国の王子なんだけど、王位を狙う親族たちによって幽閉されるところから始まる」


吉川 「え……。唯一信頼できてた騎士が身代わりになって死んだんだけど」


藤村 「そう。その屍を超えて生き抜かなければいけない」


吉川 「ハードだなぁ」


藤村 「立ちはだかる敵はかつて共に戦場を戦い抜いた部下たち。やっとの思いで婚約者の元に辿り着いた主人公だが、婚約者は戦禍に巻き込まれ非道な人民たちに慰みものにされていた」


吉川 「うわぁ……。救いがない」


藤村 「そしてこのステージでは向かってくる人民を倒しながら婚約者の出すハートをキャッチするのだ!」


吉川 「ん? あぁ、そういうゲームなのね。アクションなんだ」


藤村 「そこ上に乗れるから。あとアイテムの羽の靴を手に入れれば二段ジャンプできるようになる」


吉川 「なんつーか。ムービーの部分から結構イメージが変わったゲーム展開だね」


藤村 「ナイスクリア! 一応まだテスト段階でリリースする時にはもっと難易度調節するから。今はほぼイージーモード」


吉川 「あ、またムービーが」


藤村 「一度国から抜け出して遠縁の知人を頼りに落ち延びる。そこで主人公をサポートする仲間たちと出会う。仲間たちはそれぞれ辛い過去を抱えており、主人公はその境遇に寄り添うことで信頼を得る」


吉川 「この隻腕の魔術師カイモンのストーリーが辛すぎる。なんか妹とか出てくると俺ダメなんだよなぁ」


藤村 「そしてステージ2では主人公をさらなる悲劇が襲う。パチンコを駆使して子豚ちゃんたちを狼から守るのだ。パワーアップアイテムを取れば連射や三方向に撃てるようにもなるぞ!」


吉川 「狼から子豚ちゃんたちを。よく組み込んだな、この重いストーリーの中に子豚ちゃんたちを」


藤村 「ここで守った子豚ちゃんたちの数によってエンディングが分岐するから」


吉川 「子豚ちゃんで!? あれだけ戦う理由を抱えた主人公なのに?」


藤村 「時を同じくして王国内で治安を乱していた黒衣の騎士、その正体は主人公の兄だった。お家騒動によって放逐され庶民として育てられた兄が王位が揺らいだのを見て義勇兵と共に立ち上がる。ここからはダブル主人公となり、兄と王子を切り替えながらステージを進んでいく」


吉川 「うわぁ、やっと熱い展開になってきた。今まで重かったから」


藤村 「ステージ3では領土内のバリケードを破壊しながらギャルの声援マークを3つ集めるとボスが出現。伸びる舌と粘つく唾液攻撃を避けて弱点の股間を攻めるんだ!」


吉川 「ギャルの!? ギャルって何!?」


藤村 「知らない? 若い女の子の」


吉川 「あ、そのギャル。俺の知ってるギャルだ。全然知らない世界観なのに。ギャルが急にこの世界観に出てくるの?」


藤村 「ギャルいた方がいないよりいいだろ?」


吉川 「いや、どうだろ? この場合は即答しかねるな。あとボスもなに? 人間じゃないの?」


藤村 「これは魔族」


吉川 「魔族今まで出てきた?」


藤村 「出てきてないし、これからも出ないけど」


吉川 「ここだけスポットで魔族が出てきたの!? そんな魔族の登板の仕方ある?」


藤村 「ゲームだから」


吉川 「そりゃゲームだけども! ゲームらしからぬ重いシナリオだったのに」


藤村 「そしてステージ3をクリアしたあとはボーナスステージ」


吉川 「ボーナスステージ!? いや、あっていいけども。全然国が乱れて活路が見出だせてない中でボーナスステージが来るんだ」


藤村 「飛び交うウンコの中からソフトクリームだけを上手くキャッチするのだ。ウンコに3回当たるとフンコロガシに転がされて地獄へ真っ逆さまだぞ」


吉川 「おい、世界観!」



暗転

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