桃太郎

藤村 「桃太郎のパーティってさ、最初に出会ったのが犬だったからまぁしょうがなく容認したけど、そこからズクズクになってるよな」


吉川 「ズクズク?」


藤村 「だってどう考えても人を集めるだろ? これから戦いに行くんだぞ? できれば狩人とかさ、そういう能力があればいいけど最悪農民でもいいか、くらいに考えてたんじゃないの?」


吉川 「でも相手は鬼だし」


藤村 「そりゃ農民じゃ分が悪いのはわかってる。当時武士とか防人とかいたかわからないけど、できれば戦闘に長けた若い男性がいいと考えるよな」


吉川 「確かに普通はな」


藤村 「それが犬。最初に犬と出会った時点で相当ズッコケたとは思うんだよ。『い、犬が!?』って」


吉川 「そういう話だと思ってたから疑問に思わなかったけど、犬か」


藤村 「また犬ってのがさ、ちょっと悩ましいじゃない? 猟犬とかもいるから、まんざら役に立たないわけじゃなさそうって一瞬頭をよぎっちゃったんだろうな。犬は犬でいざという時のためにキープしておいて、そこから桃太郎軍を編成し始めればいいかなって桃太郎も考えたんだと思う」


吉川 「軍の編成を考えてたんだ?」


藤村 「なのに、次に猿。これはビビると思うよ?『え、猿が? なんで?』ってなるでしょ、桃太郎の器がどれほどデカくても」


吉川 「本当は狩人とか欲しいのに」


藤村 「そう。そこに猿。でも猿は猿で『犬がいけたんならいいんじゃないですか?』みたいな顔してるんだよ。むしろ『犬より人に近いですよ』感まで出してきてさ」


吉川 「見てきたようなこという」


藤村 「ただ猿来てもしょうがなくない? これから鬼を倒す軍を編成するのに、猿が? 犬は役割ありそうだけど猿は何? マスコットキャラ?」


吉川 「いや、知らないよ。猿も猿できび団子目的だろ。別に戦うこととか真剣に考えてなかったと思うよ。団子もらって適当なところで逃げてもいいだろ、猿だし。くらいに思ってたんじゃないの?」


藤村 「でも桃太郎も猿が来たという予想外の展開に驚いて許しちゃったんだろうね。こうなるともう歯止め効かないよ。次に雉。まさかの鳥類。雉が『仲間になります』って言ってきたらちょっと笑っちゃうよ?」


吉川 「雉はなぁ、戦闘力なさそうだし」


藤村 「それが最初に雉だったら桃太郎も『バカ言ってんじゃないよ!』って一蹴できたと思う。でももう犬、猿を受け入れちゃったからさ。なんかここで断ると『差別ですか? 私が鳥類だから?』みたいなややこしいことになっても困るじゃん」


吉川 「雉、理屈っぽそう」


藤村 「で、犬、猿、雉を連れてたらさ、もう人なんて集まらないよ。そんな珍集団がまともに徴兵できるわけがない。『屈強な戦士を集めてます!』って後ろに犬と猿と雉だよ? なめてんのかって話でしょ」


吉川 「人、無理か」


藤村 「お前なら行くか? 今から入隊すれば猿の後輩ですって。そんなのに参加するか?」


吉川 「もうダメだな、それは」


藤村 「だから最初の犬で『犬もありかぁ~?』って思っちゃった時点で終わってるんだよ、桃太郎」


吉川 「その点、ルフィはゾロだもんな」


藤村 「未来の大剣豪だよ? 完璧なパーティじゃん。桃太郎も犬をとりあえずでキープしちゃった辺りが人の心をわかってないよね。桃から生まれた出自の悪いところが出ちゃったのかな」


吉川 「桃太郎さんのことをそんな風に言うなよ」


藤村 「鬼の側も対応は困ったと思うよ? 今まで何度も鬼退治に来た人間はいたけど、犬と猿と雉しか集まりませんでしたってやつが来たらさ、なんか本気で戦うの悪いじゃん」


吉川 「すごい可哀想なやつ扱いになってる」


藤村 「やっぱり人材って難しいよ。最初の一人が肝心だから。いくら会社の犬みたいなやつが来て『悪くはないけど……』ってキープしちゃうと、もうダメなんだっていう教訓が描かれてる話だよな」


吉川 「そんな話だったの、桃太郎?」



暗転

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