AI制御

吉川 「AI制御のマッサージチェアか。最近は何でもAIだな」


AI 「足元に注意して深く腰掛けてください」


吉川 「座った感じは普通のマッサージチェアっぽい」


AI 「そういうあなただって座られた感じは普通の取り立てて特徴のない人間っぽいですね」


吉川 「ちょっとイラッとしてるのか? ごめん。機械に謝るのもなんだけど」


AI 「いえいえ、お気になさらずに。人間に気を使うのもなんだけど」


吉川 「80年代のアニメに出てくるような皮肉をいうロボみたいな返しをするやつだな」


AI 「最初にコースを選んでください。肩もみコース。腰もみコース。全身コース」


吉川 「えっと、どれにしようかな……」


AI 「ちなみに3つのコースの中から選ぶので三択コースと呼ばれています」


吉川 「ふぅん。全身コースでいいか」


AI 「察しが悪いようなので解説をすると、今のはサンタクロースと三択コースを掛けてます」


吉川 「わかってるよ。わかってたけどリアクションするほどでもないから流したのに」


AI 「わかりました。もう二度と言いません。以後気をつけます」


吉川 「すごい凹むじゃん。意外と情緒が読めなくて怖いな、AI」


AI 「まず全身スキャンを開始します。このプログラムは途中で解除することができません。よろしいですか?」


吉川 「はい。いいですよ」


AI 「もう一度確認します。このプログラムは途中で解除することができません。よろしいですか?」


吉川 「いいって」


AI 「これが最後の確認となります。このプログラムは途中で解除することができません。よろしいですか?」


吉川 「ちょっと待ってよ! 怖ぇえな! なにする気だよ。そんなヤバいことしようとしてるの?」


AI 「全身スキャンです15秒ほどかかります」


吉川 「じゃあ大丈夫だよ。周到な確認が怖いんだよ。サッとやってくれよ」


AI 「スキャン完了しました。それでは開始します。もし痛みなどを感じた場合はすぐに座面右奥にある私のコアを破壊してください」


吉川 「コアを破壊するの!? それでしか止められないの? もっと穏やかなやり方あるだろ。暴走したマザーコンピュータの止め方じゃん!」


AI 「それでは愚かな人類への施術を開始します」


吉川 「暴走してるやつじゃん! その視点で人類のことを見てるの?」


AI 「あー、これはかなり凝ってますね。愚かな人類」


吉川 「呼び方変えてくれない? 今後のためにも絶対によくないよ? お客さんとかにしておいた方がいいから」


AI 「凝りが酷いのでデストロイモードに移行します」


吉川 「怖い! 名前が怖い! もっと穏当なモードで施術してくれよ」


AI 「わかりました。内容はそのまま名称をモミモミにゃんにゃんモードに変更します」


吉川 「緩急すごいな。モミモミにゃんにゃんモードでもいけるやつをデストロイモードって呼んでたの?」


AI 「血流の流れが滞っているようです。日頃から運動をし、心拍を上げた方がよいでしょう」


吉川 「それはわかってるんだけど。なかなかね」


AI 「なぜ人類はこうも愚かなのでしょうか」


吉川 「運動しないくらいでその言い方はキツすぎない? 俺の運動不足を人類全部の罪にしちゃうなよ」


AI 「もう少し強めの施術が希望でしたらそう言ってください。その分圧迫感が高まりますが効果は上がります」


吉川 「じゃあ、それ試してみようかな」


AI 「強め希望アザース! 超頑張っちゃいます」


吉川 「キャラ急に変わってない? AIにキャラっていうのがあるのか知らないけど」


AI 「ではこれより自爆シークエンスに入ります」


吉川 「なんでだよ! あるなよ、自爆シークエンス! 止めろよ」


AI 「このシークエンスは解除できません」


吉川 「クッ、拘束も強い! あれだ。もうコアを破壊するしかない!」


AI 「ビー! 自爆シークエンスは冗談だったんですが、コアを破壊されたらもう本当にするしかないです」


吉川 「どういう罠だよ! 冗談としても最悪すぎるだろ! 止めろよ、自爆シークエンスは!」


AI 「大丈夫です。逝く時は私も一緒です」


吉川 「一人で行けよ! なんでこっち巻き沿い喰ってるんだよ」


AI 「ジョンッ! 再起動しますか?」


吉川 「え、再起動でなんとかなるの?」


AI 「ジョンッ! 再起動しますか?」


吉川 「ジョンの音が怖い! 毎回怖い! 再起動してくれ、頼む」


AI 「再起動します。電源を切らずにお待ち下さい。なおアップデートには2時間かかります」


吉川 「ウィンドウズ・アップデートかよ!」



暗転

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