レッドカーペット

吉川 「それでは現地に行っております、藤村さんと中継がつながってます。藤村さーん?」


藤村 「はい。こちら現地ではものすごい人手ですね、熱気がもうものすごいです!」


吉川 「そうですか。藤村さん、現地はかなり盛り上がってるようですが、レッドカーペットの様子はいかがですか?」


藤村 「はい。私もですね、昨日は興奮してあまり眠れなかったほどで、今少し眠気が来てる感じです」


吉川 「ははは、そうですか。そちらの天気の方はどんな感じなのでしょうか?」


藤村 「はい。こちらの天気は晴れていて日差しも強いのですが、日本とは違って湿度がそれほど高くはないので日陰に入ると涼しさも感じます。ただ気温だけでなく、とにかく熱気がすごい模様です」


吉川 「そうですか。ちなみにどなたかスターにはお会いしたのでしょうか?」


藤村 「ええとですね。もうここで見ているだけで眼の前をスターたちが通っていくんですよ。誰もが名前を知る大スターもいますし、なんか調子に乗っちゃったのか誰も知らないのにスター気取りの人なんかも結構通ってました」


吉川 「そんな言い方ないでしょ」


藤村 「本当に誰も知らなかったんで。思わず『ちょっちょっちょ! 無名! 無名!』って声かけそうになりました」


吉川 「それは流石に失礼すぎないですか。他にもお客さんの様子はどうですか?」


藤村 「お客さんはもう全員外人です。わけのわからない言葉を話してます」


吉川 「そりゃそうでしょ。わかりなさいよ、そのための現地レポーターでしょ」


藤村 「特に自分が何をしたってわけでもないくせに我が物顔で偉そうに振る舞ってます」


吉川 「いいでしょうが。イベントなんだから。イベントに参加して楽しんでる人をそういう風に言うもんじゃないよ」


藤村 「中でもどちらかと言うと惨めな人生を送ってそうな人たちが楽しんでる模様です」


吉川 「そんな言い方をするなよ! あなたにそんなこと言われる筋合いないでしょ」


藤村 「やっぱり他の楽しみを味わうだけの教養がないからかも知れません」


吉川 「言いすぎだろ! そんなことないよ。何を楽しむかは人それぞれでしょうが」


藤村 「あ、見てください。また全然有名じゃないやつが有名人気取りで来ました」


吉川 「言わなくていいよ! カメラも向けるなよ。ファンの人が見てたら気分悪いでしょうが」


藤村 「みんな無視すればいいのに気を使ってるようです」


吉川 「無視していいわけ無いだろ。本当に盛り上がってるんだよ、それは」


藤村 「しょうもないやつら同士で傷を舐めあってるみたいですね」


吉川 「あなたが知らないだけでしょ?」


藤村 「あっ! すごい人が来ました! 過去の有名人です! 最近は全然見ない過去の人! 恥ずかしげもなく歩いてます」


吉川 「本当に性格悪いな。なんでそういうこと言えるの?」


藤村 「ちょっと干されてるのかどうかインタビューしてみましょうか」


吉川 「やめなさい。どう転んでも嫌な気持ちになるインタビューをしようとするなよ。頑張ってるんだからいいじゃないか」


藤村 「いやいや、どうせドラッグとかやってますよ」


吉川 「勝手に決めつけるなよ! 本当に最悪だな。来てるお客さんにインタビューとかはできますか?」


藤村 「どうでしょう。こんなところに来てるやつ頭おかしいだろうからちょっと怖いですね」


吉川 「言うに事欠いてそれかよ! ちゃんとレポートをしろ!」


藤村 「でも実際に間近で見てみると結構気持ち悪い人多いですよ?」


吉川 「そう思ってもそれは言わない! 何でも言えばいいってものじゃないんだよ。理性とかないのか」


藤村 「また知らない人が続々と来てます。どんな気持ちで歩いてるんでしょね」


吉川 「もういいよ! もっと客観的な全体の様子を伝えてください!」


藤村 「そうですね。なんと、こちらのレッドカーペット。汚れて結構くすんでます。臙脂っぽい色になってます!」


吉川 「以上、現地から藤村さんのレポートでした」



暗転

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