バック・トゥ・ザ

孫  「おじいちゃん、ボクですボク! やっと会えた」


吉川 「……? 俺?」


孫  「そうだよ、おじいちゃん」


吉川 「いや、おじいちゃんではないけど。まだ24だし」


孫  「あぁ、そっか。ええと実はボクは50年後の世界から来たあなたの孫なんです」


吉川 「それを信じろと?」


孫  「あぁ、もう面倒くさいな。IDを読み取ってもらえれば一発でわかるのに。この時代にはそのシステムがない!」


吉川 「信じるわけないでしょ。なんで俺にそんな」


孫  「なんで俺にって、他の人はボクのおじいちゃんじゃないからですよ!」


吉川 「そうか。確かにそりゃそうだけど。もしそれが本当だとしてなんで孫が急にこの時代に?」


孫  「時空タイム制御のアクシデントが起きてボクだけこの時代に飛ばされたんだよ」


吉川 「へぇ。じゃあ頑張って戻らないとな」


孫  「それもそうだけど、ボクの存在が危うくなってるんだ!」


吉川 「そいつは大変だ」


孫  「実はここに来る前に、この時代で知ってる人に助けてもらおうとおばあちゃんのところに行ったんだ」


吉川 「おばあちゃん。ということは、俺と結婚してキミに親を産む人」


孫  「そう。ボクのお母さんのお母さんだ」


吉川 「そう言われても、俺はまだ結婚してないし、恋人もいないし、多分その人とは出会ってもない」


孫  「そうなんだよ。で、おばあちゃんに会って助けてもらおうと自分の状況を説明したんだ。おじいちゃんがエッチなログに侵入してそこからウィルスに感染して時空タイムシステムに影響が出たこととか」


吉川 「何言ってくれてるんだよ! 俺はそんなことしてないだろ」


孫  「するんだよ! 50年後に。そのせいでボクはこの時代に来てるんだから」


吉川 「俺のせいなの?」


孫  「そうだよ。だいたいおじいちゃんのせいだよ」


吉川 「いや、でも今言われてもさ」


孫  「それでおばあちゃんがおじいちゃんのことを聞いてくるから、全部話したよ。ギャルと3P未遂事件とか」


吉川 「話したの? なんでそれを知ってるの?」


孫  「おじいちゃんいつも話してたじゃなない。本当に惜しいことしたって」


吉川 「50年語り継いでるの? 俺はあの出来事を50年も悔やみ続けて孫にまで言うんだ」


孫  「おばあちゃん、それを聞いて最低って言った。絶対そんなのと付き合いたくないって」


吉川 「ダメじゃん言っちゃ! だいだいしてないからね? 未遂だから」


孫  「あと金玉の脱毛しようとワックスをベリッて剥がしたら皮膚ごと持ってかれて血が出てきたけど病院に行くのも恥ずかしくてなんとか治ったものの未だにそこだけ皮膚の色が違う事件も」


吉川 「孫に話さないだろ、その話は」


孫  「100回は聞いた」


吉川 「武勇伝みたいに語ってるの? 今でも思い出したくないくらいなのに。年取ってむしろ話したくなっちゃったのかな」


孫  「アンドロイド猥褻ドン引き事件とか」


吉川 「なにそれ? それは俺の話じゃないな」


孫  「あ、まだ起こってないやつか」


吉川 「未来に? 未来で俺はしでかすの? もうタイトルだけで想像がつくような事件を」


孫  「おばあちゃんは死んで欲しいって言ってた」


吉川 「なんで言っちゃうんだよ! まだやってないことだろ、それは」


孫  「どうせやるから」


吉川 「でも言って嫌われることないでしょ。知らなくていいことじゃん」


孫  「でもおばあちゃんにボクが孫だって証明しなきゃいけなかったから」


吉川 「俺を引き合いに出すなよ! 俺っていうか、おじいちゃんの説明はしなくても上手いことできただろ」


孫  「多分本来の歴史はおじいちゃんの変態性を隠したままおばあちゃんと付き合うことになったんだろうけど、それがバレたせいでボクの存在が危ういんだ!」


吉川 「そんな変態でもないだろ。まぁ、孫に嬉々として語った俺も悪かったかもしれないけども。そのくらいは誰の人生にだってあるエピソードだよ」


孫  「おばあちゃんはマジでありえないし同じ星に住んでるってだけでも気持ち悪いって言ってました」


吉川 「そんな嫌う? これもう無理なんじゃいの? ここから結婚まで行くプランが見えてこない」


孫  「ボクもです」


吉川 「お前が諦めるなよ! 自分の存在のためにどうにか頑張らなきゃダメだろ!」


孫  「とりあえずおばあちゃんを執り成すためにこの時代のお金を分けてください。えーと、インフレ率からすると100万円くらい」


吉川 「ひょっとして新しいタイプのオレオレ詐欺なのか?」



暗転

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