やんちゃ

藤村 「でも若い頃なんてそんなもんじゃない? 俺だって若い頃はやんちゃしてたもんだよ」


吉川 「うわぁ、そういう発言やめたほうがいいですよ? 自己正当化してるようにしか聞こえない。本当に若い頃の過ちを悔いてるならそんな軽々しくやんちゃなんて言えないはずです」


藤村 「誰だってするだろ、やんちゃくらい。昔のことに目くじら立てるなよ」


吉川 「昔のことと言っても現在に繋がってるわけじゃないですか。その頃の行いを無反省で過ごしてるとしたら現在も問題があるということになりますよ」


藤村 「もちろん今はしないよ? ただ若い頃なんてバカなんだから、大人としてそういうバカも許す度量を見せなきゃ」


吉川 「同意できませんね。若さで許される罪なんてないですよ」


藤村 「だから大げさに言いすぎなんだって。やんちゃはやんちゃだよ」


吉川 「そのやんちゃっていい方が物事を軽くするから良くないと言ってるんです」


藤村 「ほら、若い頃はさ、家の中では常に膝立ちで生活したりしてたな。半年やってた。やんちゃだったから」


吉川 「ん、思ってたのと違う。それやんちゃなんですか? いや、でもやんちゃ以外の呼び方もないか」


藤村 「しょうがないんだよ、若い頃ってバカだから」


吉川 「それ小学生の頃とかのやんちゃじゃないですか?」


藤村 「26くらいだったかな」


吉川 「結構しっかりと大人だ」


藤村 「あと、トイレットペーパーの使用量をどれだけ短くできるかチャレンジとか。やんちゃだったなぁ、あの頃は」


吉川 「誰にも迷惑かけてない。やんちゃと言えばやんちゃではあるが」


藤村 「最終的にはまったく使わなくてもOKになった。ウォシュレット無しで」


吉川 「どうやったんですか? 大でしょ? 技術でどうにかなるものなんですか」


藤村 「今はもう流石にできないよ? あの頃はやんちゃだったから。見せたかったなぁ、あの姿」


吉川 「そんな姿は絶対に見たくないけど。やんちゃでできることなのかな、それは」


藤村 「あと新聞紙をどこまで細かくちぎれるか挑戦したりね。やんちゃだったなぁ。終わると指の先が真っ黒になるの」


吉川 「インコみたいなことしてる。そんな善良なやんちゃって存在するものだったのか」


藤村 「誰だって若い頃はそんなもんだろ?」


吉川 「いいえ? そんな道は通ったこともないし、存在することも知りませんでした」


藤村 「そう? あれはやったでしょ? ボーリングの球生活」


吉川 「そんなお馴染みみたいな感じで言われても初耳の単語」


藤村 「ボーリングの球を持ったまま生活するの。指三本でこう持ち続けて」


吉川 「意味ない。今までの全部に意味がない。いや、意味がないからこそやんちゃなのか? やんちゃであること以外の意義が何一つ思い浮かばない」


藤村 「4日が限界だったけどね、そのあと病院行ったら肩の筋みたいのが伸びちゃってて半年くらい腕が上がらなかった」


吉川 「やんちゃ! やんちゃが過ぎる! 今までやんちゃという言葉に嫌悪感を抱いていたけど、それを覆すやんちゃっぷり」


藤村 「吉川くんなんか若いんだから今からでもチャレンジできるんじゃない?」


吉川 「ボーリングの球生活をですか? 絶対に嫌です。ボクの人生にやんちゃは必要ないんで」


藤村 「そんなことないだろ。男なんてだいたい若い頃はやんちゃしてるもんなんだよ」


吉川 「さっきまでなら即否定できたのに、やんちゃの多様性を見せつけられたせいで一概に否定できない」


藤村 「あとなんだろ、盗んだりとかはしたかな。ちょっとしたスリルを求めて」


吉川 「はい、ダメです! アウトです! それはダメですよ。やんちゃの範囲を超えてます。というか、本来のやんちゃで言われがちなダメなやんちゃ!」


藤村 「でもやめられなかったんだよね。人の目を盗んで変顔したりするの」


吉川 「やんちゃがハートフル過ぎる!」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る