制限

藤村 「そうだ。知っての通り能力は制限を設けることで飛躍的に力が増す。特定の対象のみ、特定の場所のみ、などの制約と引き換えに圧倒的力を手に入れるというわけさ」


吉川 「随分とペラペラ話すんだな。いいのか? これから戦う相手に」


藤村 「なに、構いやしないさ。どうせお前はここでおしまいだ」


吉川 「言うじゃないか。大変な自信だ。ということは今この環境がお前にとって能力が最も活かせる状況なんだな」


藤村 「俺は場所や相手なんて不自由なことはしない。己の意志で変えられないパワーアップなんて意味がないからな」


吉川 「ほう、自分の意志で」


藤村 「そうだ。完全とは言わないが、ある程度は自分で制御できる。見ろ、俺の能力はこうしてる間にもどんどん高まってるぜ」


吉川 「しまった! なんて強力な……」


藤村 「この制約を手にした時、俺は高笑いしたぜ。最強になったのだからな。俺の制約はうんこがしたくなればなるほど増大する能力だ!」


吉川 「う、うんこ?」


藤村 「そうだ。すでに驚いてるようだが、まだこんなもんじゃないぜ。全然余裕がある」


吉川 「うんこしたくなっちゃってるってこと? これから戦うってのに?」


藤村 「今はまだ、ちょっとしたいくらいだ。時間が経てば経つほどどうなるかわかるな?」


吉川 「わからない。うんこしたくなるってことでしょ?」


藤村 「そうだ。それだけパワーアップするということだ。もちろん、お前ごときにそこまでの力はいらないだろうがな」


吉川 「それ、そのまま放っておいたらどうなるの?」


藤村 「最大限にまで高まるさ」


吉川 「いや、だから。最大限に高まったあとさ」


藤村 「そんなことをお前が心配する必要はない。なぜならお前はすでにやられているからだ」


吉川 「漏らすってこと?」


藤村 「必ずしもそうじゃないだろ! さっとお前を倒して、さっと出せばいいんだから」


吉川 「さっと出したあとは弱いってこと?」


藤村 「そんなのはどうでもいいだろ! ほら、とっととかかってこいよ」


吉川 「かかっていきたくないけど。うんこ出そうな人に」


藤村 「俺の能力に怖気づいてかかってこれないんだろ!」


吉川 「いや、なんか下手に刺激して大変なことになっても困るし」


藤村 「いいから! 来いよ! こうしてる間にもどんどん力は高まってるんだぞ」


吉川 「力は高まってるって、つまり漏れそうになってるってことだろ?」


藤村 「そうだよ。だから早く!」


吉川 「なんでうんこしたくて焦ってる人の都合に合わせなきゃいけないの?」


藤村 「お前今更そういうこと言うか? もうお互いにあとには引けないだろ」


吉川 「いや、そっちは引けないかも知れないけど、こっちは別に引いてもいいから」


藤村 「もしな? もしだぞ? もし俺の能力に俺自身が耐えられずにバーストした時」


吉川 「それっぽい言い方してるな」


藤村 「そうなったらもう連帯責任だぞ?」


吉川 「なんでだよ。お前が勝手に漏らしたんだろ」


藤村 「お前のせいでそういうことになってるんだろ! 普段だったらそんなに我慢しないんだから!」


吉川 「最初から我慢するようなものに制約をするなよ。もっと怒りによってとかにすればよかったのに」


藤村 「今もうそういうことを言ってる場合じゃないだろ! いいから! 早く!」


吉川 「やだよぉ」


藤村 「早くこいや! こっちはもう高まってるんだよ!」


吉川 「高まってるなら余計に嫌だよ」


藤村 「お前、もう俺の能力が制御できないレベルにまでなるぞ? いいのか?」


吉川 「よくないよ。じゃあしてこいよ」


藤村 「そうしたら能力ほぼなくなっちゃうだろ! 一番弱い状態になるんだから」


吉川 「なんでそれに設定してるんだよ」


藤村 「もう早くぅ! ダメもう、すげえ来てるから。能力が来てるから!」


吉川 「来てるのは能力じゃないだろ。今のお前はただの漏れそうな人だよ」


藤村 「ちょっともう本当にまずいんで。あの、本当に。お願いだからさ」


吉川 「高まりすぎてお願いしてきちゃってるじゃん。もう意識が戦いどころじゃないだろ」


藤村 「ヒッ……ヒッ……ヒッ……ヒッ……」


吉川 「もう何も言えなくなってる。もう諦めろ。すぐトイレに駆け込め」


藤村 「あ……」


吉川 「あ……」



暗転

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