騙し絵

藤村 「まぁ、これは有名なやつなんで見たことあるかも知れません。老婆だと思ってた人物が若い女に見えます」


吉川 「あー、見たことある。老婆ってどこ? 普通に向こう向いてる若い女にしか見えないな」


藤村 「耳のあたりが目で、顎のラインが鼻だと思って見ると」


吉川 「あぁ! 見えた! はいはい。あー、もうなんか一度そっちに見えちゃうと逆に若い女に戻れないわ」


藤村 「そうですね。錯視を利用した騙し絵というものですが、他にも色々なものがあります」


吉川 「うわぁ、見たい」


藤村 「これなんかどうでしょう? かわいい猫だと思ってたものが。よく見てください。何に見えます?」


吉川 「猫でしょ。猫にしか見えない、ちょっと待って。いや、猫だな」


藤村 「この猫のあたりを触手だと思ってください。そうすると、ゲロチョビレに見えますね」


吉川 「なに? ゲロ? なにそれ?」


藤村 「ほら、一度そう思ってしまうともうゲロチョビレにしか見えないでしょ」


吉川 「だからなに!? ゲロチョビレには見えない。っていうか、なんなの? 知らないから見ようがない。ゲロチョビレの本物を見たことない。猫しかいない」


藤村 「他にもですね」


吉川 「ゲロチョビレの説明してくれないの? 知らない俺が悪い感じ?」


藤村 「こちらの写真は広瀬すずに見えますが? ちょっと見方を変えるとほら、広瀬アリスにも見えます」


吉川 「それ騙し絵じゃなくない? もうシステムが違わない? あとそんなに二人似てなくない?」


藤村 「どうです? どっちに見えます?」


吉川 「いや、ただフォーカスの甘い写真だろ。どっちとかじゃなくて」


藤村 「あとこちらはマナカナの写真ですが」


吉川 「騙し絵のコンセプトどこ行ったんだよ!? マナカナは双子だろ。どっちに見えるじゃなくて、一般人はどっちの区別もつかないんだよ!」


藤村 「一見マナカナの写真に見えますが、こちらはマナカナのものまねタレントであるマノカノという双子のユニットの写真になります」


吉川 「もう何を言ってるんだよ!? マナカナですらないの? なにをどう騙してるつもりなの? ちょっと騙され方がわからない。全体的に何もわからない」


藤村 「そう言われるともうマナカナには見えないでしょ?」


吉川 「だってマナカナじゃないんでしょ? じゃあ見えないよ。違う二人だろ」


藤村 「ねぇ、もうこんなに大きくなって」


吉川 「なに感慨深くなってるんだよ。全然知らないよ、このものまねタレントの二人は。せめてマナカナ本人に感慨深くなれよ!」


藤村 「あとこちらの絵画ですが、群衆の中で喝采を浴びてる人物に見えますが、ちょっと全体を引いてみると悪意に見えますね」


吉川 「悪意に? 概念? 悪意って一般的に知られてる形状があるの?」


藤村 「見えません? 悪意?」


吉川 「いや、だから。悪意のフォルムがわからねえのよ」


藤村 「よく見てください、この表情。人の醜さが描かれてますね。全体が悪意を示している絵画と言われてます」


吉川 「解釈として!? それはもう芸術鑑賞の視点でしょ。騙し絵だと思ってた。なんでこの流れでちゃんとしたちゃんとした鑑賞の方に行ったの?」


藤村 「そうですね。だいたい高く評価された絵画は悪意が描かれてます」


吉川 「そんなことねえだろ! 勝手な断言をするなよ。騙し絵の話はどこに行ったんだよ?」


藤村 「ではこちらをご覧ください」


吉川 「これ、鏡じゃねえか! 鏡だよ。どっからどう見ても。映ってるの自分!」


藤村 「ですが、見方を変えるとほら、ゲロチョビレに」


吉川 「なに、ゲロチョビレって!?」



暗転

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