ぺてんし

声優

藤村　「本日のゲストは、なんと！　大人気声優の吉川さんです！」

吉川　「どうも、吉川です。よろしくお願いします」

藤村　「あー、もういい声！　そんないい声どこから出てるんですか？」

吉川　「いえいえ、普通ですけどね」

藤村　「本日はその素晴らしい声でしょうもないことをたっぷりと語っていただきたいと思います」

吉川　「しょうもないことを？　いえ、別にそれでもいいですけど」

藤村　「今までやってきて難しかったなぁという役や、これは無理だなと思った役や、音響監督ぶっ殺すぞと思った役などございますか？」

吉川　「あの、音響監督ぶっ殺すぞと思ったことはないです。なんかいっぱい並べられたけど。そんな気持ちにはなったことないです」

藤村　「そうですか。音響監督ぶん殴りたいなって思ったことは？」

吉川　「ないです。何を聞き出そうとしてるんですか？」

藤村　「ですから難しかった役など」

吉川　「難しかった役ですね。そのことについてのみ答えますね。色々あるんですが、ちょっと厄介なのが実際の自分と似てる役ですね。むしろ離れてる役のほうが作れるんですけど、似ていると逆に演じるのが嘘っぽくなっちゃって」

藤村　「ではその役をやった時は音響監督をぶっ殺したいなと？」

吉川　「思わないです」

藤村　「思わない？　ということは、その役と違う現実の吉川さんはぶっ殺したいと思うということになりますね？」

吉川　「変なロジックで追い詰めてくるな！　どっちもないよ。人間てどっちかじゃないでしょ。０と１００じゃないんだから」

藤村　「なるほどなるほど。では演じるのは無理だなっていうような役はありますか？」

吉川　「それはないですね。どんな役でも自分なりに演じるっていうことが必要ですし、それを求められてそこにいると思ってますので」

藤村　「さすが、どんな役でも演じられると」

吉川　「そう言っちゃうと偉そうですけど、そのくらいの気持ちで常に挑んでいます」

藤村　「吉川さんはラジオなどもやられてますが、やっぱり声がいいと聞いてる方も誤魔化されちゃつ部分があると思うんですよ。でもよくよく考えると大したこと言ってない場合が多いじゃないですか。いや、吉川さんがそうというわけではなくてですね、一般論としておじさんの話って面白くないじゃないですか」

吉川　「それ言わない方がいいですって。一般論にしたら私だけじゃなく声優全般に及んじゃうから。声優のファンの火力を見くびらないほうがいい。本当にこちらで制御できないやつなんで」

藤村　「ちょっとその感じをキャラっぽく言ってもらえることできませんか？」

吉川　「別にいいですけど、どんなキャラで？」

藤村　「ヘドロから生まれたゴミ界の王子みたいな感じで」

吉川　「そんな役やったことないけど。ゲヘッ、そんな無礼なこと二度と宣うでないゲ」

藤村　「……」

吉川　「……あの」

藤村　「さて吉川さんと言えば大人気アニメの……」

吉川　「一ミリもリアクションしないんだ。だったら要求しないで欲しかった」

藤村　「大人気アニメの『ブレイ忍』ですが」

吉川　「いや、私は出てないですね」

藤村　「出てない？　え、なんでですか？」

吉川　「なんで！？　なんでって言われたら、えらい人がそう決めたからだと思うんですけど」

藤村　「あんな低俗な作品には出ないという感じですかね？」

吉川　「そんな風には思ってない！　いい作品ですよ」

藤村　「俺が出れば多少はマシになったのに、とは思ってます？」

吉川　「なんでそういうこと言うの？　色んな人が傷つくでしょ、そういうこと言ったら」

藤村　「では吉川さん、その主人公で一言お願いできますか？」

吉川　「私が！？　だから、私は出てないんだって。主人公は違う人です」

藤村　「でもどんな役でも演じられるとさっきおっしゃったのに。あれは嘘ですか？」

吉川　「なにこれ？　オーディションみたいなことをここでしろっていうの？」

藤村　「主人公やってもらえますか？」

吉川　「だから本来は私じゃないんですよ？　それを無理やり私に演じろってことですよね？　やれって言われればやりますけど、自分なりの解釈ってことなりますがよろしいですか？」

藤村　「実際に音声を入れる際もそれだけ言い訳をするのでしょうか？」

吉川　「うるせぇな。実際の録音の時とは状況が違うから断ってるんだろうが。なんだよ、じゃあやるよ。ニンニンのニュアンスはどうでもいいよ！」

藤村　「……」

吉川　「……」

藤村　「さて」

吉川　「もう二度とやらねえからな！　なんだよ、その顔？」

藤村　「でもどうしてこのアニメに吉川さんが出演されてないのかはわかりました」

吉川　「わかるんじゃねえよ！　それも失礼だろ！」

暗転