ご当地

吉川 「このあたりのご当地名物みたいなものってありますか?」


藤村 「ご当地名物。あの、観光とかで?」


吉川 「はい。せっかくなんで。ご当地ビールとかご当地ラーメンとか、まんじゅうとか、そういうのってあります?」


藤村 「後藤っちに連絡とろうか?」


吉川 「え、ご当地? なんです?」


藤村 「後藤っち。後藤。あのほら、親父が郵便局に務めてた」


吉川 「え、後藤さんという人?」


藤村 「そうそう。同級生だから」


吉川 「あ、違います。ご当地ってあの、その土地ならではの」


藤村 「いやー。あんなやつは他にいないと思うけどね」


吉川 「そうじゃなくて。その食べ物だったり」


藤村 「ラーメン、ラーメン。後藤っちのラーメン最高だから」


吉川 「後藤っちのラーメンは土地のものじゃないでしょ」


藤村 「お前は後藤っちって呼ぶなよ。同級生じゃないだろ」


吉川 「あ、すみません。そうじゃなくて」


藤村 「後藤っちキレるとヤバいからな。仁藤っちの2.5倍ヤバいから」


吉川 「その名前は本名じゃなくてヤバさのランキングの話なの? 知り合いとかじゃなくてお店でオリジナルのっていうのを探してるんですよ」


藤村 「だから後藤っちのところに行けって言ってるの」


吉川 「あ、お店やってるんですか?」


藤村 「あれ店? 店っていうのかな。たぶん。なんかわかんないけど」


吉川 「店かどうかわからない? なんかちょっと怖くなってきました」


藤村 「だからいきなり行ったら無理だよ? 知らないやつ来たらメッキャメキャにされるから。だから連絡しておいてやるっていってんの」


吉川 「あぁいや、大丈夫です。他のところにしますんで」


藤村 「他なんかないよ。後藤っちのラーメンすごいんだから。センスの塊よ?」


吉川 「すごい内輪でウケてる感のある感想。そんなすごいラーメンなんですか?」


藤村 「だって入れる? 普通、ラーメンに。がんもどきなんて」


吉川 「あぁ、あんまり聞いたことないですけど。でもナルトが入るんだから練り物が入るのはありかも知れませんね」


藤村 「そういうレベルじゃないから。あとビールはないけどどぶろくはあるから。あれはなんだ、密造かな」


吉川 「まずいじゃないですか。密造したどぶろくを勧める人」


藤村 「大丈夫。この辺でバレた人は一人もいないから」


吉川 「そういう問題じゃない。バレるバレないじゃなくて倫理観の話で」


藤村 「あとモノマネも新しいの開発したって言ってたから」


吉川 「後藤さんの新しいモノマネ。旅の思い出として求めるには薄味な」


藤村 「悟空と炭治郎がバスケしてる時に救急車通るやつ」


吉川 「ちょっと面白そう。素人のおじさんのモノマネにしてはまぁまぁ練ってあるお題」


藤村 「だから急に行ってもダメだよ。メッキャメキャにされるから」


吉川 「そのメッキャメキャってなに!? どういう状態にされるのがメッキャメキャなの」


藤村 「そうそう変なことしなければちゃんとお土産も持たせてくれるから」


吉川 「そのお土産ってなんか隠語的なことじゃないですか? ヤバいブツとかじゃないですよね」


藤村 「それはもう後藤っちの気分次第だよ」


吉川 「いや、ちょっと。思ってたのと違うみたいなので大丈夫です。他あたってみます」


藤村 「他ってどこ行くの? 武藤っちのところ? あそこは後藤っちとバチバチだよ?」


吉川 「縄張り争いが! 5よりヤバい6の藤っちが。どんな状況になってるの?」


藤村 「だからもう大人しく後藤っちのところ行っておきなよ。どうしても行きたくないって言うなら俺から後藤っちに筋通しておくけど?」


吉川 「筋を。何の筋? もう強制な感じなんですか、このあたりを通ったら後藤さんのところは」


藤村 「だから連絡してやるから心配すんなよ」


吉川 「あぁ、じゃあ挨拶だけさせて頂く形で」


藤村 「わかった。もしもし? すみません、地域振興課の後藤課長いらっしゃいますでしょうか?」


吉川 「普通の窓口!」



暗転

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