葬式

藤村 「大変だったよ。なんせ急だからさ。喪服も持ってないからスーツの店に行って吊るしの喪服を買って」


吉川 「そうなんだ。葬式ってあんまり行ったことないかも。小さい頃おばあちゃんのとか行ったくらい」


藤村 「これから増えるよ。自分と同世代でもありえない話じゃなくなってくるから」


吉川 「そうなんだよなぁ。こればっかりはね。葬式で注意することとかある? これだけはやっちゃいけないとか」


藤村 「イチャイチャしちゃダメだな」


吉川 「イチャイチャはしないよ。さすがに葬式では。葬式以外でも別にしてないし」


藤村 「いやいや、これがわからないんだって。葬式って喪服の女がわんさかいるんだぞ?」


吉川 「だからなんだよ! イチャイチャしようって思わないだろ」


藤村 「喪服の女なんて葬式かエロ動画でしか見たことない存在だぞ? それがいっぱい!」


吉川 「本来葬式でしかないんだよ! エロ動画のは軒先借りてるだけなんだから!」


藤村 「周りを喪服の女に囲まれてみろよ。あれ? そういう世界に入り込んじゃったのかな、って一瞬戸惑うから」


吉川 「葬式の最中に!? どういう世界?」


藤村 「なんかちょっとくらいはそういうことしちゃっても怒られないんじゃないかって」


吉川 「そんなわけないだろ!」


藤村 「でもエロ動画でそういうことして怒られてる人見たことあるか?」


吉川 「エロ動画ではないよ! エロ動画はエロ動画で日常とは違うだろ」


藤村 「葬式も非日常だからひょっとしたら、と」


吉川 「ひょっとしないよ。葬式の厳粛な雰囲気の中でひょっとすることないだろ!」


藤村 「だーかーらー! 俺だってそのくらいのことはわかってるよ。でもイチャイチャするってのはボーダーラインじゃん」


吉川 「なんの? どことどこのボーダーラインなの?」


藤村 「エッチなことをしたらアウトだよ? もうそりゃアウトだよ。そのくらいの常識はあるさ。でもイチャイチャはさ、日常においても結構許されることのある領域じゃん?」


吉川 「なにをもってしてイチャイチャと判断するのかわからないけど」


藤村 「プライベートではだいたいOKでしょ。いわゆるパブリックな場でさえもイチャイチャまでならOKなところは多いじゃん。そりゃ推奨はされないだろうけども」


吉川 「イチャイチャなら? まぁ度を越さない限りはそれを取り締まる法律とかもないしな」


藤村 「外国だったら当たり前の話だよ」


吉川 「その外国だったらってのも雑だな。いっぱいあるよ、外国なんて。絶対イチャイチャを許さない国の方が多いくらいだ」


藤村 「まぁ、そうやって考えちゃいがち。で、葬式の話なんだけど。葬式ではね、やっぱりイチャイチャしない方がいいんだよ」


吉川 「当たり前のこと! ロジカルにたどり着いた結論みたいに言ってるけど、最初からわかってたことだから」


藤村 「『えー、そのファッションいけてるじゃん。どこの?』みたいにブランドのタグを見ようと触ったりするところからはじめちゃダメ」


吉川 「喪服だろ! ブランドを知りたいやつおかしいだろ。相手だって喪服をファッションでセレクトしたわけじゃないんだよ」


藤村 「なんかアダルトグッズみたいのを手首に巻いてたとしてもOKのサインじゃないから」


吉川 「数珠だろ! アダルトグッズみたいっていうなよ! 今後そういう風に見えちゃうだろ」


藤村 「まぁ、そのくらい喪服だからってそういうことを期待しない方がいいって話」


吉川 「そんな期待をして葬式に挑むやついないよ!」


藤村 「エロ動画以外でも喪服の女はいる。ってことを葬式に行く前にちゃんと確認したほうがいい」


吉川 「しなくてもわかってるよ、それは」


藤村 「あと時を止める時計を手に入れた時も注意が必要」


吉川 「それはエロ動画だけだよ!」



暗転

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