ぺてんし

職質

警官　「すみません、ちょっとよろしいですか？」

吉川　「やってません」

警官　「え。な、なにがですか？」

吉川　「やってません！　絶対やってません」

警官　「何かをやってるんですか？」

吉川　「やってないって言ってるじゃないですか」

警官　「ちょっといいですかね？」

吉川　「黙秘します」

警官　「そこまで！？　ただ職務質問をしたかっただけなんですが、そうなってくると話が変わってくるな」

吉川　「あの人の方が怪しいですよ！　ほら、あの人！　見て！」

警官　「いや、そう言われても。あなたがまず怪しいから」

吉川　「ほら！　あの人、チンチン出そうになってる」

警官　「嘘だろ。そんな人いる？　どんだけハチャメチャシティなの？」

吉川　「絶対あっちの方が私より先にチンチン出しますよ！」

警官　「あなたも時間の問題なの？　いずれ出るってこと？　そんな破廉恥な予告するやついるか」

吉川　「警察ってことはあなたの給料は我々の税金なわけでしょ？　いいんですか、その貴重な税金をチンチンのことなんかに注ぎ込んで！？」

警官　「いや、私だって税金は払ってるよ。あとチンチンのことに注ぎ込んでるわけじゃないから。あなたが勝手にチンチン関連を匂わせてるんでしょ」

吉川　「臭ってないですよ、失敬な！」

警官　「そういう意味じゃないよ。いいから怪しいものがないか調べますから」

吉川　「完全にチンチンのことしか考えてないじゃないですか！」

警官　「どうしてっ！？　この流れでチンチンのことだと考える方がおかしいでしょ」

吉川　「だって囚われた潜入捜査官シリーズでお馴染みの流れでしょ」

警官　「お馴染んでないんだよ、そんなシリーズは。そんなものをすべての人が知ってる口ぶりで言うんじゃないよ」

吉川　「調べて何も出なかったらどうするんですか？」

警官　「どうするって、別に何もないですよ。ご協力ありがとうございましたというだけで。何も出ないことがお互いにとって一番いいことじゃないですか」

吉川　「でも先っちょからなんか出ちゃったらどうするんですか？」

警官　「何が！？　何が何の先っちょから！？　何をどう調べると思ってるの？」

吉川　「そんな屈辱的なことをあえて言わせる気ですか？」

警官　「そういうつもりじゃない。別に趣向としてやってるわけじゃないから。仕事でしかないしあなたに興味があるわけでもない」

吉川　「どうだか。警察官のそういう不祥事は多い印象がありますがね」

警官　「どういう不祥事を想像してるの？　そりゃ警察官と言っても多いんだから許せないことだけどおかしなことをする人もいるよ。我々だってそういうことには迷惑してるんだよ」

吉川　「ではお互いそういうことが明るみにでないよう、今回は何もなかったということで」

警官　「どういうことだよ！　お互いって、こっちは別に何も後ろ暗いことはないんだよ」

吉川　「じゃあ聞きますけど、あなたは生まれてから一度もチンチンを出したことないんですか？」

警官　「そりゃ……。なくはないよ。だって、必要に応じてそうすることもあるだろ。それとこれとは何の関係もない」

吉川　「そんな言い訳が今更通用しますかね？」

警官　「言い訳じゃないだろ！　というか今更っていつ今更になったの？　なにか取り返しのつかない状態まで来ちゃってるの？」

吉川　「だったらお互いに、……ね？」

警官　「ね？　じゃないよ。ここまで怪しい事態になって見過ごせるわけないだろ！」

吉川　「やれやれ。強情な人だ。つまり開放して欲しければ出すもの出せと要求してるんですね」

警官　「そんな袖の下なんているか！」

吉川　「裾の下を」

警官　「出すなっ！」

暗転