3秒ルール

吉川 「おわっ! やべ。まぁ、3秒ルール。大丈夫大丈夫」


藤村 「え? 食うの? 落ちたやつ」


吉川 「3秒ルールだから」


藤村 「そうか。3秒ルールなら大丈夫なのか」


吉川 「厳密に言えば菌は時間によって付着するわけじゃないからダメなのかも知れないけど。気持ち的な問題だから」


藤村 「つまりあれだろ? 3秒以内にキャンセルすればこの世のどんな現象もなかったことにできるという」


吉川 「そんなルールだっけ? 解釈が大きくなりすぎてない?」


藤村 「人を刺しても3秒以内に縫合すればなかったことになるという」


吉川 「なかったことにはならないだろ。刺したらダメだよ。あとその縫合する技術は何? スタンド能力?」


藤村 「嘘をついても3秒以内に謝ればノーカン!」


吉川 「ノーカンではないな。ただ謝りと嘘がセットで来ただけで。そんな謝る気満々なら初めから嘘をつかなければいい」


藤村 「それをいうなら3秒以内に拾って食べるなら落とさなきゃいい」


吉川 「落とすのは違うだろ。不可抗力だもん」


藤村 「嘘だってうっかり言っちゃうことあるじゃん」


吉川 「まぁ、流れでついってこともあるか」


藤村 「パパがTV局の社長と友達だからアイドルのサインが貰えるとか」


吉川 「そんなスネ夫みたいな嘘をつい言っちゃう? 用意しておかないと出ないボキャブラリーじゃない?」


藤村 「3秒ルールの脆弱性を突けば、落ちて3秒以内に拾ったものを再度落として3秒以内に拾ってと連続でやり続けて、いつでも好きなタイミングで地面から食べ物を拾って食べられる」


吉川 「そんなシステムの穴をほじくるようなバグ技を使うなよ。永遠に続けられないんだよ」


藤村 「落ちて拾ってとやり続けると腰が痛くなるので、落ちた時の反発力を使って食べ物を運び続ける、これが俗にドリブルと言われる技である」


吉川 「バグ技が俗称つくくらい広まってるじゃん」


藤村 「夏場の食物が傷みやすい時期でもドリブルを使えば常に無菌で新鮮な状態で身の回りにおいておくことができる」


吉川 「ないんだよ、そんなウルテクは。現実はそのシステムになってないから。ドリブルしたらただ汚れて食べられなくなるだけ。ドリブル3回でもう原型とどめてないと思う」


藤村 「今思いついたんだけど、チンチンを出しても3秒以内にサッと隠せば……」


吉川 「ダメだよ、それは。まったくもってダメだよ。チンチンに関しては3秒も出てたら重大事件だから」


藤村 「カウント2.9で危ねえ! みたいな」


吉川 「もう危ないんだよ。カウントを取る前にすでに危ないんだから」


藤村 「でも3秒ルールですからって言えば見た人も『なんだ、3秒ルールか』って安心するし」


吉川 「しないよ。余計に不安になるよ。チンチンさっと出して3秒ルールですって言い張ってる人と同じ空間に存在したくないよ」


藤村 「そりゃ俺だってさすがに4秒以上出したらまずいとは思うよ?」


吉川 「守られてねえんだよ、3秒の壁で。一瞬であったとしてもまずいと思えよ。セーフになるラインは秒じゃないから。出るか出てないかだから」


藤村 「急にそんなこと言われたら世界観がおかしくならない?」


吉川 「チンチンを出す時点で世界観も何もないんだよ。それがまかり通る世界観はないんだから」


藤村 「だったら3秒ルールだってないんじゃない?」


吉川 「そこに戻る!? 結構こねくり回した上で真実を突きつけるの残酷じゃない? あるっていう体じゃないとお互いに虚しい時間になっちゃわない?」


藤村 「やっぱある!」


吉川 「3秒で切り返したか」



暗転

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