反省

吉川 「今後このようなことのないように。きちんと反省して」


藤村 「はい! 反省しました」


吉川 「え。いや、もうちょっとしっかりと」


藤村 「もう行っていいですか?」


吉川 「反省してないだろ」


藤村 「しました。もうサッと」


吉川 「サッとする反省なんてないんだよ。なんだよ、そんな軽く塩振っておきますみたいな感じの反省」


藤村 「大丈夫ですんで。もう反省し終わりましたから」


吉川 「し終わったの!? 反省をし終わるかどうかの判断は自分でつけなくない?」


藤村 「そのあたりは慣れてるんで」


吉川 「慣れるほど反省しまくってる事態をまず反省しなきゃならないんじゃないの?」


藤村 「それももう反省し終えてます。結構前に。学生の頃にすでに」


吉川 「反省し終えてるのにまた反省しなきゃいけないことになってるなら、反省できてないってことじゃないの?」


藤村 「人間は成長するので日々新しい反省はありますから」


吉川 「すごいデキる人みたいな発言してるけど。叱られて反省してるのわかってる?」


藤村 「はい。もうその程度の反省は片手間でできますんで」


吉川 「片手間で反省するなよ! それは反省できてないだろ。反省ってものを間違えてる」


藤村 「いやいや、普通の人ならそうでしょうけど、もう自分はその先のレベルに行ってるんで」


吉川 「反省で!? 反省の先のレベルってのがあるの? 反省ってどこまで言っても地平線がある行為じゃないの?」


藤村 「大概の反省はもうすでにし終えてるので」


吉川 「反省し終えてるなら反省を促される事態にならないだろ。し終えてないよ、それは」


藤村 「同じ反省でも二度三度と何度も味わえるタイプですから。その度に新鮮な反省もありますし」


吉川 「反省を二度三度やるならもう根本的に重大な欠陥があるんじゃないの? 一度で終わらせるためにやるのが反省だろ」


藤村 「ま、一般の方はそうかもしれませんけどね」


吉川 「なんで半笑いなんだよ。見下してるの? 一般人の反省を。その反省の達人みたいな立場から。その態度も反省しろよ」


藤村 「はははっ。これはもうあらかじめ反省し終わってることですから」


吉川 「あらかじめってなんだよ!? 先出しで反省してるやついないんだよ」


藤村 「想定内です。そう来るだろうなと思って反省しておいたので。なのでその指摘事態が意味なくなってますね」


吉川 「意味はあるだろ。なんでその攻撃は効かないみたいな顔してんだよ! 効けよ。そもそも反省というものの認識が間違ってるんだよ」


藤村 「いいえ。私から言わせると反省したくらいでやらかさないなんて反省の本質を理解してないしか思えない」


吉川 「なんだよ、そのお前の独自ルールの反省は。こっちは世間一般の反省を求めてるんだからそれを適用しろよ」


藤村 「いいんですか? その程度の反省で満足してしまって? そんなものは反省という雄大な概念のほんの氷山の一角にすぎないんですよ。知りたくありませんか、こちらの世界を?」


吉川 「何を知ってるんだよ! ようこそ真の反省世界への第一歩です、みたいな格上感を出すなよ」


藤村 「その先の反省を知れば、今までの反省は全く意味がなかったということに気づきますよ」


吉川 「反省できてないってことじゃねえか。反省を台無しにするその世界はなんなんだよ」


藤村 「人はそのような些末な反省に囚われるべきではない。反省とは全であり、この世のすべてが反省なんです」


吉川 「何言ってるんだよ!? 反省っていうのはその都度小さいことからきちんとしていくことが大事なんだよ。わかってんのか?」


藤村 「はい。わかり終えてます」


吉川 「わかりも!?」



暗転

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