パズル

藤村 「人生ってパズルみたいなものでさ、解こうとしてもなかなか解けないけど、それでも取り組み続けて解けた時の喜びって他にはないんだよな」


吉川 「う~ん、なるほど。そう言われたらそうかも知れないな」


藤村 「でもパズルと違うのは答えがない場合もあるってこと」


吉川 「確かに。もうこんな時間か。昼飯に何にする?」


藤村 「そうだなぁ。でも昼飯ってさ、パズルみたいなものでさ。必ずしも最適解を目指さなくても、色々と模索していくうちに答えにたどり着いたりするからさ」


吉川 「昼飯が。そう言われたらそんな気もするけど。何がいいとかないの?」


藤村 「パズルみたいなもんだからな」


吉川 「そっか。じゃあまた中華でいい?」


藤村 「中華ってさ、言ってればパズルみたいなもんだよな」


吉川 「またパズル! もういいよ、パズルは」


藤村 「でも肉と野菜と油を組み合わせて最終的に美味しく成り立たせるのってもはやパズルだよな」


吉川 「別にそれは中華に限った話じゃなくない? イタリアンもだろ」


藤村 「まさにイタリアンこそパズルなんだよ」


吉川 「もういいよ! パズルじゃなくていいから」


藤村 「ま、中華でいいか」


吉川 「うん。……でも女心ってわからないよなぁ」


藤村 「なに急に? どうした?」


吉川 「いや、だから女心」


藤村 「何食べようかなぁ。結構ガッツリいきたい気分なんだよ」


吉川 「パズルは!? パズルのパスを出してるじゃん」


藤村 「パズルのパス?」


吉川 「だから女心! まるでパズルのようだって言いやすいでしょ」


藤村 「あー、思いつかなかった。一度も思ったことないわ」


吉川 「イタリアンだってないだろ! イタリアンがパズルっていうよりはずっと女心の方がパズルっぽいだろうが!」


藤村 「具体的にどのあたりがパズルなの? 女心の」


吉川 「知らねえよ! 具体的なもんじゃないから。なんかふんわりとわからなさ加減がパズルっぽいだけだよ!」


藤村 「そんなふんわりじゃわからないわ」


吉川 「わかるだろ! じゃあなんで中華はわかってるんだよ!」


藤村 「俺の中では中華はパズるけど、女心は別にパズらないから」


吉川 「動詞形で!? そんな言葉ないだろ!」


藤村 「いや、でもパズルに対する思いってのは人それぞれだからさ」


吉川 「別に俺はパズルに対する思いなんてないよ。お前に合わせて良いパス出したなって思ってただけで。全然通らなかったけど」


藤村 「そういうところがまたパズルっぽいんだよね」


吉川 「出た! もうなにがどうパズルっぽいのかわからない」


藤村 「わからないからこそパズル。すぐにわかっちゃったらパズルじゃないもんな」


吉川 「あれか。人の気持ちってのがそもそもそうなのかな?」


藤村 「なにが?」


吉川 「パズルだろ! なんで急に初対面みたいな顔になってるんだよ! 流れ的にパズルのたとえしかありえないだろ」


藤村 「人の? なに?」


吉川 「そんなにピンときてない? 今までのパズル感度の高さはなんだったの?」


藤村 「パズル感度?」


吉川 「いや、パズル感度なんてないけど。お前がそんな感じだったから」


藤村 「パズル感度ってガダルカナルと関係ある言葉?」


吉川 「関係ないよ。別にそんなに韻も踏んでないよ」


藤村 「お前って急にわけのわからないこと言い出す時あるよな」


吉川 「なんでもパズルにたとえてたやつが言う? 正直俺だってわけわかってなかったけど、お前のパズルたとえはざっくりと受け入れてたのに」


藤村 「そうやって曖昧な状態なのに答えにたどり着いた気になるのってパズルっぽくないな」


吉川 「それで結構だよ!」



暗転

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