本場

吉川 「さて次の商品は?」


藤村 「近頃色々と物騒ですから。自分の身は自分で守る、そんな心構えでいたいものですね」


吉川 「そうですね」


藤村 「そんな時に便利なのがこの護身用のスタンガン」


吉川 「わぁ、コンパクトですね。これならバックの中に入れていても邪魔にならない」


藤村 「スマートフォンと比べてもこの大きさ」


吉川 「この大きさなら普段から持ち歩くのに便利ですね」


藤村 「ただ小さいと威力の方が不安になるという方もいらっしゃると思います」


吉川 「確かに。いざという時に役に立たなかったら困りますもんね」


藤村 「そうおっしゃると思って事前にアンケートを取ってまいりました。こちらを御覧ください」


吉川 「これは何のアンケートですか?」


藤村 「はい。こちらはですね、本場である川崎市の市民に押し当てたところ、なんと98%が抵抗することがなくなったそうです」


吉川 「本場。何の?」


藤村 「老若男女問わず無作為に選んだ方々に押し当てました」


吉川 「いきなり? なんか許可を取ったりしてないんですか? お婆ちゃんにも?」


藤村 「本場ですから」


吉川 「本場ってなんですか。何かの本場でもダメでしょ」


藤村 「ただ、ここで気になるのは西の方の人にも効くのかということですよね」


吉川 「そんなに変わらないでしょ。人間なんだから。西の人が電撃耐性あるなんて話は聞いたことないですよ」


藤村 「なのでこちらのアンケート結果を御覧ください。こちらは西の本場である尼崎の市民に押し当てた結果です。なんと96%の方が抵抗しなくなりました」


吉川 「チョイチョイいる抵抗する人は何なの? その人が怖いな」


藤村 「さらに! いいですか? 今までのスタンガンではあまり効果がないと言われていた地域もありますね」


吉川 「そんなこと言われてる場所あるの? 魔境?」


藤村 「その本場、北九州の市民に押し当てた結果。48%の市民が抵抗をしなくなり21%の市民が『結構効いている』と答えています」


吉川 「かなり耐えてる。回答する余裕あるやつはなんなの? 逆に怖いが」


藤村 「そんな本場でも折り紙付きのこちらのスタンガン。なんとカラーバリエーションが4色となっております」


吉川 「あんまり求めたことないですけどね。スタンガンに彩りを」


藤村 「更に今回ならでは。セットでこちら。特殊仕様の防弾防刃ジャケットがついてきます」


吉川 「スタンガンとジャケットで盾と矛といった感じですか」


藤村 「こちらの防弾防刃ジャケットですが、こちらを着て本場の足立区で一週間過ごしたところ、致命傷はなかったそうです」


吉川 「本場のレッテルがよくないと思いますよ。何の本場か言ってないけど」


藤村 「もちろんジャケットでカバーしきれていない手足の方はズタズタになっておりますが」


吉川 「何かに巻き込まれたの? 普通に一週間過ごしただけでそんな風にはならないでしょ」


藤村 「なにしろ本場ですので」


吉川 「だから何の! 言ったら言ったで問題になっちゃうのか。みんな薄っすら思い浮かべているけど」


藤村 「しかし本場でこれだけの効果を上げておりますから。一般の方が普段遣いをする分には十分すぎるほどの性能だと思われます」


吉川 「普段遣いはしないものだと思いますけどね。本場以外で」


藤村 「そして今から30分以内にお電話いただいた方には、漏れなく本場で出回っている健康サプリメントをお付けします!」


吉川 「それは絶対に手を出してはいけないやつでは?」



暗転

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