新メンバー

藤村 「ダウンタウンは今席が空いてるじゃない?」


吉川 「席が空いてるってわけじゃないな。色々事情があるみたいだけど」


藤村 「だから考えたんだけどさ、そこに代わりに入ろうかなと思って」


吉川 「え? 誰が?」


藤村 「俺が。せっかくだからね」


吉川 「何がせっかくなの? いや、入れるわけないだろ。何言ってんだ?」


藤村 「違う違う。別に成り代わろうってわけじゃないの。空いてるから、そこを埋めてあげようって言ってるだけで」


吉川 「埋めてあげられないよ。お前では」


藤村 「だからそうじゃない。そりゃ俺がそのまま代わりにはならないよ? でもほら、サポートメンバーみたいな形でさ」


吉川 「いらないだろ、サポートメンバーは。聞いたことないよ、お笑いコンビのサポートメンバー」


藤村 「最初はサポートメンバーからだけど、いずれ正式にメンバーになって、ゆくゆくは三人で活動できたらなって思ってる」


吉川 「お前が思ってるだけでしょ? できるわけないじゃん」


藤村 「なんでだよ? なんで全然関係ないお前がそんなに否定してくるんだよ」


吉川 「確かに俺が決める権利はないけど、国民の総意みたいなものがお前を認めないだろ」


藤村 「ダウンタウンてそんな選挙で決まってるようなことなの?」


吉川 「違うけど、そのくらい世間に浸透してる存在だろ。むしろなんでお前はお前の意志一つで入れると思ってるわけ?」


藤村 「入れるかどうかはわからないけど、それも聞いてみないとわからないじゃん。本人に聞いたの? 入っちゃダメなんですかって?」


吉川 「聞けないだろ。聞けるわけないだろ、そんなバカなこと。聞くまでもなくわかってることだから」


藤村 「天動説を信じてた人たちだってそう言ってたよ?」


吉川 「それとは別だろ。入ったり出たりするものじゃないから」


藤村 「でも新メンバーが入らないと卒業したくてもできなかったりするでしょ」


吉川 「卒業ってアイドルグループじゃないんだから。その概念自体ないんだよ。二人のコンビで一人が卒業したくなったら解散だよ」


藤村 「それはしのびないじゃない? せっかくのダウンタウンが。それだったら俺が一肌脱ぐよ」


吉川 「せっかくのダウンタウンが穢れるんだよ、お前の脱皮で」


藤村 「だから俺だけ新メンバーってなると違和感があるんじゃない? 何だったら俺のあとにも2,3人入れてさ」


吉川 「2,3人!? 知らないやつが?」


藤村 「別に知ってるやつでもいいけど」


吉川 「そういう問題じゃねえよ。増やすなよ!」


藤村 「ダウンタウンをいつまでも見たいって人たちはいるわけだからさ。もし二人に何かあっても俺たちがダウンタウンでいる限り途絶えることはないわけじゃない?」


吉川 「二人やめたあとも!? イギリスのバンドのイエスじゃないんだから。オリジナルメンバーはもう一人もいないけど、なんかあとから入った人たちでイエスですって言い張ってるやつ!?」


藤村 「なんだったらやすしきよしの方に新加入したメンバーとかも合流してさ」


吉川 「やすきよにも入るやついるの!? やすしでもきよしでもないやつが? やすしもきよしもいませんけど私がやすきよですって言い張って続ける気?」


藤村 「そうやって合流していくことによってオールスター感がでてくるじゃん」


吉川 「オールスター感を誰も求めてないよ!」


藤村 「想像してみ。あのダウンタウンとやすしきよしが合併! みたいなの。すごいニュースバリューだよ」


吉川 「すごいニュースバリューではあるけど、ダウンタウンもやすしきよしもいないんだろ? お前たちが勝手に名乗って合併してるだけじゃん」


藤村 「だからそうやって関係ないお前が否定するんじゃないよ。直接本人に聞いてみるから」


吉川 「お前、よくそんなこと聞こうと思えるな」


藤村 「意外とダウンさんも快諾するかも知れないし」


吉川 「待てよ。その解像度でダウンタウン認識してるの?」



暗転

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