デトックス

吉川 「ここんところたまにデジタルデトックスというのをやってるんだよ」


藤村 「デジタル? デトックスって毒素排出みたいのだろ? なんか機械でやるの?」


吉川 「いや、むしろ逆っていうか。デジタルなもの、スマホとかパソコンとかに触れない時間を作ることでリラックスしたり自分と向き合ったりするんだよ」


藤村 「ふぅん」


吉川 「週末とかさ。あえてネットとかに触れない。そうすると意外と世界の見方が変わるよ」


藤村 「メッセージとか来たらどうするの?」


吉川 「無視。まぁ、2,3日返事が遅れて問題になるようなメッセージは来ないし」


藤村 「いいな、それ。俺なんかネットに繋がってないと不安で死にそうになるから」


吉川 「そういう人にこそおすすめ」


藤村 「現代人て情報にしても食事にしてもあらゆるものが飽和した中で生きてるから、あえて制限をすることが幸福に繋がったりするんだよな」


吉川 「そうそう。昔の人は今みたいな世界に憧れてたはずなんだけど、実際に暮らしてみると過剰ってのも問題があるよね」


藤村 「色々なものをデトックスするのいいかもな。風呂デトックスとか」


吉川 「それ、お風呂が面倒くさいだけじゃない?」


藤村 「冬場は寒いからお風呂入りたくなるし、夏場は汗かくからシャワー浴びたくなるじゃん? でも今の季節は正直お風呂に入らなくても何の問題もないから」


吉川 「あるよ! 程度によるよ」


藤村 「毎日じゃなくていいでしょ。毎日入らなきゃ不潔みたいな強迫観念から逃れるために風呂デトックスは必要」


吉川 「せめて3日に一回くらいは入ってくれ」


藤村 「あと服デトックスね。人間て服着がちじゃない? いつまで服着てるのって他の動物達は笑ってるよ?」


吉川 「服は着るだろ。なんだよ、服着がちって。そんな概念ないよ」


藤村 「冠婚葬祭以外は服フリーでもいいと思うけどね」


吉川 「いいわけないだろ。何のメリットがあるんだよ」


藤村 「自然な姿で自分自身と向き合うことができるわけじゃん?」


吉川 「デトックスの一番怪しいところに焦点を当ててきたな。そのスピリチュアル方面からのアプローチはなるべくしないように気をつけてたのに」


藤村 「それこそ程度の問題でさ。要は選択肢なんだよ。今日は服を着ない日にしようって選択肢があるだけで人間て豊かになれるわけじゃん?」


吉川 「もっともらしいことを言ってるが服に関して言われると全然同意できない」


藤村 「選択肢がないっていうのは生活を締め付けられてるのと一緒だから。例えば非合法のドラッグをやってはいけないと言われると反発してやりたくなる、でも非合法のドラッグをやってもいい日というのがあれば反発する気が起きないから逆にドラッグをやらないですむんじゃないか」


吉川 「そいつは絶対にドラッグやると思うよ。そんな考え方するやつ、もうお終いだよ」


藤村 「言ってみれば法律デトックスだな。ここから2,3日法律を守らないってすることによって、より法治国家の素晴らしさを体感できるってわけ」


吉川 「『パージ』って映画がそういう話だけど。ろくな結末になってないから」


藤村 「あと身体のことを言えば酸化が一番良くないから。オキシジェンデトックスをした方がいい」


吉川 「酸素を断つの? 死ぬでしょ、普通に」


藤村 「死にはするけど、後々の健康を考えるとその方がプラマイでプラスになる」


吉川 「死にはするけどって言葉はないんだよ。死んだあとないんだから」


藤村 「健康のためなら多少の犠牲はつきもの。アンチエイジング効果もあるよ? もう年を取らなくなる」


吉川 「死んでる状態で健康を上げようと下げようと意味ないだろ。その後は年を取るんじゃなくて腐るだけだから」


藤村 「突き詰めていくとデトックスをデトックスすることになるから。デトックス×デトックス』


吉川 「HUNTER×HUNTERみたいに」


藤村 「毒素を排出することをしない。具体的に言えばうんこしない」


吉川 「それ便秘っていうんだよ」



暗転

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