仙人

仙人 「ふぉっふぉっふぉ。若いの、猫ミームは初めてかえ?」


吉川 「あ、あなたは?」


仙人 「どこにでもいるただのジジイじゃよ。人は猫ミーム仙人と呼ぶがの」


吉川 「猫ミーム仙人。え? 仙人なの?」


仙人 「さぁな。ただ古くから猫ミームを見てるだけじゃ」


吉川 「いや、なんか。仙人とかがいるジャンルじゃなくない? 昔からあるものじゃないし」


仙人 「そうかの? しかしワシは古参での」


吉川 「最古参でも最近だろ! ほんのちょっと前だよ。仙人がでてきても全然ありがたくない。歴史のあるジャンルだけだろ、仙人が成立するの」


仙人 「若いものは急ぎすぎるのぉ。どれワシの長い時間をかけて作った猫ミームを見せてやろうか」


吉川 「そんなにかかってないだろ! かけるものでもないんだよ」


仙人 「はたして今の猫ミームに慣れたものにわかるかのぉ」


吉川 「変遷もないんだよ! 文化が成熟するほどの時間も経ってないんだから。どれもだいたい一緒だよ! むしろみんな一緒のやつを求めてるんだよ」


仙人 「ふぉっふぉっふぉ。まだその程度の理解か。若いのぉ」


吉川 「ないんだよ、奥深さは! 全員がその程度だから。浅瀬でチョコチョコやることだけが楽しいんだよ」


仙人 「わしなら浅瀬でピチピチチャパチャパと言うがの」


吉川 「やかましいよ! 誤差みたいな高さからマウントとるんじゃないよ。もっと他に仙人として取り組むようなテーマがあるだろうがよ!」


仙人 「ふぉっふぉっふぉ。そういうのは古参がウザいのでの」


吉川 「Z世代みたいなこと言ってんじゃないよ! だからってこんな花火みたいなすぐ消える文化に手を出すなよ」


仙人 「そんなことはない。100年も経ってみい、ワシの生きた道そのものが猫ミームになるのじゃ」


吉川 「ならないよ。100年後に残ってるわけないだろ。エンタメとしての強度を考えろよ。半年後も怪しいよ」


仙人 「古くからの友人もそう言っておった。タピオカ道人と白たい焼き老師もな」


吉川 「全員にわかじゃねえか! 流行りものに飛びついてるだけだろ! 芯が一個もない!」


仙人 「あ、違う。今は白たい焼き老師じゃなくて10円パン老師じゃ」


吉川 「変わってるのかよ。節操ねえ! 老師ならブーム去ってもしがみつけよ!」


仙人 「若いの、そのようなことでどうする」


吉川 「いや、お前たちがどうするんだよ? 他人にとやかく言える立場か?」


仙人 「あやつは『もう10円パンもヤバい』と嘆いていたぞ」


吉川 「だろうよ! 全然乗れてない。入るのも出るのも半歩遅い。ぶっちゃけ猫ミームだってもう終わってるぞ?」


仙人 「ふぉっふぉふっふぉ。そのようなこと、直視したくないのじゃ」


吉川 「目を背けるなよ! 自分の感度のなさと世間の移り変わりの激しさに。ちゃんと向き合えよ」


仙人 「そんなことではお主はなんの仙人にもなれぬぞ」


吉川 「目指してないんだよ! 少なくとも猫ミーム仙人みたいなのにはなりたくないよ」


仙人 「なろうと思ってなるものでもない。気づいたら周りからそう呼ばれてるだけじゃ」


吉川 「ジジイだからだろ? ただジジイが流行りものにはしゃいでるのが異物だからだろ」


仙人 「いずれにせよ名になど囚われては道を踏み外す。ただあるがままに猫ミームを見ればいい」


吉川 「電池切れちゃったやつだろ! なんか忙しくてちゃんとしたエンタメとかも見る気力がなくなり、どうでもいい動画を垂れ流すくらいしかできないで休日が終わっちゃってるやつだよ!」


仙人 「ふぉっふぉっふぉ。それもよかろう。ワシとて以前はスイカゲーム仙人とも呼ばれておったのじゃ」


吉川 「ちょっと休んだほうがいいぞ!」



暗転

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