笑われ
藤村 「初の個展ということですが、大成功おめでとうございます」
吉川 「ありがとうございます。大成功っていうのかな。まぁ、思ったよりもお客さんが来てくれたみたいでありがたかったです」
藤村 「今後の活躍が楽しみだ、なんて声も各所で囁かれてますけど」
吉川 「どうなんですかね? 自分としては今まで通り作り続けていくつもりなんですけど」
藤村 「あまり実感はないという感じですか?」
吉川 「もちろん、メディアに出させてもらうこともありましたし、知り合いからメッセージなんかも届いたりしてるんですけど、ボク自身がなにか変わったというわけではないので」
藤村 「いえいえ、吉川さんはかなり話題になってますよ」
吉川 「そうですか? でも一発屋だなんて言われないように頑張ります」
藤村 「何を言ってるんですか。エジソンだって最初は笑われてたんですから」
吉川 「はぁ、そうですか。確かにそうですね」
藤村 「ですから吉川さんもこの調子でいけば大丈夫ですよ」
吉川 「ん? え。まぁ、笑われてはいないですよね」
藤村 「そんなことないですよ」
吉川 「そんなことないってなに? 笑われてはいないでしょ」
藤村 「気にすることないです。コペルニクスだって地動説を言い始めたときは頭がおかしいって思われたんですよ?」
吉川 「はぁ」
藤村 「吉川さんも負けずにがんばってください」
吉川 「なに? どういうこと? それだと頭がおかしいって思われてるみたいじゃないですか」
藤村 「まさにその通りですね」
吉川 「頭が? 頭おかしいって思ってるの? あなたは?」
藤村 「もう巷では話題でもちきりですよ」
吉川 「頭がおかしいって? そんな話題を口にするやつ民度がゴミカスじゃない?」
藤村 「そんな方々からも強い支持を受けてるようですけど、どうですか?」
吉川 「ゴミカスから? その層は違うと思う。全然ボクの作品が刺さる層じゃない」
藤村 「ははは、御本人は謙遜なさるかもしれませんけどね」
吉川 「謙遜ではないな。違うでしょ。理解できないよ、ボクの作品は。そんな他人をあざ笑うような人たちには」
藤村 「ある意味すごいって評判ですよ」
吉川 「ある意味は褒め言葉じゃないだろ! その後に続くすべてのポジティブを悪意に変換する地獄の言葉だよ! そんなやつらがなんか言ってるの?」
藤村 「ではどういう評価だと思われてたんでしょうか?」
吉川 「どういう評価!? 評価ってのは、どういうもこういうもいいものことでしょ? は? 指さされて笑われてるってこと!?」
藤村 「ええと。大変多くの方を笑顔にはされてますね」
吉川 「奥歯にものの挟まった言い方をしてくれるな! バカにされてたんだ? 話題ってのも」
藤村 「ネットではネ申って呼ばれてます」
吉川 「完全にバカにされてるやつだ。しかも古くない? 二世代前くらいのネット民じゃない? 性格の悪いジジイばっかりの」
藤村 「でもほら、ダーウィンだって最初は笑われてたわけですし」
吉川 「その最初は笑われてたってのが全然フォローになってないんだよ」
藤村 「ダーウィンも最初は猿だったわけですし」
吉川 「最初は猿じゃねえよ! そういうことを言ったのかもしれないけど、最初猿だった人じゃないだろ。色々と端折り過ぎだよ。最初猿だったら最後まで猿だよ!」
藤村 「でもほら、吉川さんは現時点では猿ではないわけですし」
吉川 「それはなんの慰めになると思って言ったの? 自分が猿かどうかで落ち込んでるわけじゃないよ? 猿じゃないことくらいはわかってるよ」
藤村 「じゃあ大丈夫です」
吉川 「なんだ、そのじゃあは!? 接続してないだろ、大丈夫に。猿じゃないから大丈夫ってフォローある?」
藤村 「ですがここから評価が一変する可能性もまだありますしね」
吉川 「そうなって欲しいよ。もう気分が上がったり下がったりでクラクラしてきたよ」
藤村 「アホの坂田だって最初は笑われてたんですから」
吉川 「それは最初から最後まで笑われてた人だよ!」
暗転
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