弟子入り
吉川 「そうやって何回来ても無駄ですよ。私は弟子は取りません」
藤村 「そこをなんとか、師匠!」
吉川 「師匠ではありません。私とてまだ修行中の身、弟子など取っている余裕はないのです」
藤村 「なんでもします! ヤクの密売だろうと、特殊詐欺の受け子だろうと、ネットで気に入らないやつを叩いたりも!」
吉川 「やってないよ? そんなことはしない。なに普段私がしてることをサポートしますみたいな体で。そんなことをやってるやつだと思ってたの?」
藤村 「違います! あくまでなんでもという行為のレンジの広さアピールするために言ったまでで。本当になんでもしますから! アフタヌーンティでまったりしたり、掃除したのを褒めたり、ディズニーで並んでもらったりも!」
吉川 「楽しそうなやつばっかり!? 頼まないだろ。アフタヌーンティでまったりして欲しいなってあなたに対して思うことはないよ? あと、掃除とか並んだりとかは私がするわけ? 私がしたのをあなたが褒めるだけ?」
藤村 「結構豊富なボキャブラリーで褒めたり!」
吉川 「褒めの質の話じゃないんだよ。するとしたら掃除側じゃない? なんで私がしたのを褒めるだけでやった気になってるの?」
藤村 「いえ、まだ修行中の身と言ってたので」
吉川 「言ったけどさ。別にそう思ってるし自分で掃除だってするよ? でもなんかあなたのためにしたみたいな形になるのはちょっと納得がいかないんだけど」
藤村 「じゃあ汚します。掃除しがいがあるように」
吉川 「なんで? 全然して欲しくない。しがいを求めて掃除してるわけじゃないんだよ。必要だから渋々やってるだけで。できればやってもらいたいくらいだよ」
藤村 「あ、そういうのは大丈夫です」
吉川 「大丈夫ってなんだよ! 普通弟子になりたくてなんでもするなら掃除は初歩の初歩じゃないの?」
藤村 「私は掃除をしたいわけじゃないので」
吉川 「こっちだってそうだよ! なんでもするんだろ? どうしてなんでもに掃除だけ含まれてないんだよ。なんでもじゃないだろ」
藤村 「そんなにさせたいんですか? 掃除を?」
吉川 「別に掃除だけに限ってやらせたいわけじゃないよ。でも掃除はしないって意思表明は意味わからないだろ」
藤村 「その掃除は修行とは関係あるんですか? ないとしたらそれはもはやパワハラでは?」
吉川 「弟子になりたいんだろ!? 徒弟制度の濃い感じのところを狙ってるくせにパワハラとか言ってくるわけ?」
藤村 「どうしてもパワハラがしたいんでしょうか?」
吉川 「したくはないよ! なんでパワハラしたい人間みたいに誘導してるんだよ。したくないし、そういういざこざも含めて弟子なんて取りたくないよ!」
藤村 「わかりました。します。掃除します。素手でトイレを洗います」
吉川 「ブラック企業の洗脳手段じゃん! そんなのを強要してない」
藤村 「トイレを掃除すれば美人になれるとほざいてた婆さんを殺します!」
吉川 「なんか流行った歌をギュッと凝縮するなよ! 凝縮しすぎて全然趣旨変わっちゃってる。怖い歌!」
藤村 「並ぶのもちゃんとこっちでします。数量限定のぬいぐるみの列にもちゃんと並びます」
吉川 「転売ヤー! そんなことはしてないんだよ。そもそも別にやって欲しいことも特にあるわけじゃないんだよ」
藤村 「でしたらちゃんとダラダラしますので」
吉川 「ちゃんとダラダラってなんだよ。何をどうしてる状態がちゃんとダラダラしてることになるんだよ?」
藤村 「『さっき宅配かなんか来てましたよ?』って伝えますんで」
吉川 「出ろよ! 宅配の人が来たんなら出て対応しろよ。なんで来てたのわかって無視して事後報告なんだよ。再配達を減らした方がいいって方向に時代が向かってるのに、どうして『来てるなぁ』って思いながらスルーできるんだよ」
藤村 「ですから師匠! お願いですから弟子にしてください。その勢いのあるツッコミを伝授してください!」
吉川 「芸人だと思ってる?」
暗転
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