藤村 「内視鏡検査をすることになったんだよ」


吉川 「え? なに!? 病気?」


藤村 「違う違う、検査」


吉川 「胃カメラみたいな?」


藤村 「大腸だからお尻からだな」


吉川 「どこか悪いってわけじゃの?」


藤村 「そういうわけじゃない。もしかしたら何か見つかって悪いって発覚するかもしれないけど、むしろそのための検査」


吉川 「ほぉ。大丈夫は大丈夫なんだな」


藤村 「そうそう。多分なにもない。っていうか去年も何もなかった」


吉川 「あ、そうなんだ? 俺はやったことないけど」


藤村 「ただ一つ問題があってさ」


吉川 「なに? 俺が力になれること?」


藤村 「尻の毛をどうしようかと思って」


吉川 「知らねえよ! なんだよ、それ」


藤村 「ほら、お医者さんに失礼があってはならないかなと思って。でもあんまりやりすぎても逆に気合が入ってるみたいで恥ずかしいじゃん? 尻の毛はどの程度がちょうどいいのか。その匙加減が難しい」


吉川 「どうでもいいだろ。尻を見せに行くわけじゃないんだから」


藤村 「とは言えエントリーする場所は尻なわけじゃない?」


吉川 「エントリーっていうの!? 内視鏡で?」


藤村 「そこをあんまり掻き分けて入っていく、みたいな大冒険にしても悪いじゃん?」


吉川 「掻き分けて。どんだけ毛があるのよ。そんなにはないだろ」


藤村 「そのあたりはプライバシーに関わるから詳しくは言えないけど、できればスッとテイク・オン・ミーしてもらいたいじゃん」


吉川 「テイク・オン・ミー!? 何その言い方。そんなおしゃれにいう大腸検査ある? 意味も良くわからない」


藤村 「できればお医者さんにも『お、この患者はできるな』って思ってもらいたい気持ちはある」


吉川 「思わないだろ。尻の毛がどうこうで。向こうは何人も見てやってるんだよ? もう作業だろ」


藤村 「だからこそさ、平均的な尻を想定してるわけじゃない? そこの予想を裏切るような非凡な尻が出てきたら印象に残ると思うんだよ」


吉川 「残るか? 尻を?」


藤村 「うわぁ、なんて尻や! これは自撮りしてインスタにアップしなきゃ! みたいな」


吉川 「ダメだろ。最悪な医者だよ。お前も他人のインスタに尻をアップされたいのか?」


藤村 「複雑な思いだけど、どうせアップされるならきれいな内にやっておきたいかな」


吉川 「ヌードを決意する若手女優! お前の尻にそこまで誰も価値を求めてないよ。もちろん医者も」


藤村 「俺が言ってるのは、それは嫌だってことなんだよ。良すぎても大変なことになるだろ? 俺は比較的凡尻の持ち主だからさ」


吉川 「鶏なの?」


藤村 「平凡な尻の凡尻ね」


吉川 「さっきからチョイチョイお前しか使ってないワードが出てくるな」


藤村 「どんなに着飾ったって、パウダーを叩いたところで、俺の尻はそこまで輝けない。尻界の北島マヤにはなれないんだよ!」


吉川 「ガラスの仮面の。尻界ってなに!? 意味はわかるけど、何!? あるの、その界が」


藤村 「どちらかというと、努力の尻だから」


吉川 「尻界の姫川亜弓なわけだ」


藤村 「なに言ってるの?」


吉川 「お前が言い始めたんだろ! 俺だってなに言ってるのって思うよ。なんだよ、尻界の姫川亜弓って!? もう俺が壊れてきちゃったよ」


藤村 「俺は凡尻だから。ステージで輝けるような尻じゃないんだよ」


吉川 「そんな尻はそもそもねえよ!」


藤村 「だからこそ逆に埋没したいというか。変な印象を残したくない。あくまで一般の尻として数ある尻の中に埋没したい」


吉川 「数ある尻ってどういう状況だよ。もう悪夢みたいになってるぞ」


藤村 「汚くても綺麗すぎても印象に残る。だからこそ、ちょうどいい尻でありたい」


吉川 「勝手になれよ」


藤村 「そのための、ちょうどいい毛の処理具合を探りたいの。一応参考までにお前の尻を見せてくれない?


吉川 「なんでだよ! 絶対に嫌だ」


藤村 「嫌だ嫌だと言いつつも、こうして頭を隠せば?」


吉川 「そんなシステムになってるわけじゃないぞ!」



暗転


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