環境
藤村 「ってことはなんですか? 環境は破壊してもいいとおっしゃるんですか?」
吉川 「そうは言ってないでしょ。もちろん人々の暮らしに合わせてできることはやっていくべきだと思いますよ」
藤村 「そのできることってのが曖昧なんですよ。体よく面倒を回避するための言説じゃありませんか? ゴミの分別だってできないっていう人はいます。なんでこんなことをしなきゃいけないんだって怒り出す人だっている。そういった人の自由な振る舞いに任せていたら環境問題は何一つ片付かないんですよ」
吉川 「そういう極端な例を出されても困りますよ。ほとんどの人は問題なくできている、ならばそれはできることと認識すべきではないですか? 私は法として一律に強制するというのは人々の反発を招く恐れがあると警告しているだけです」
藤村 「あなた自身はどうなんですか? 今私が話しているのは、あなたが、そして私がどう行動するかについてなんです。あなたは他の人と足並みを揃えてとか、人の気持ちを優先してなどと言い訳をしてばかりではないですか」
吉川 「そんなことはないですよ。私だってできる限りのことはしてます」
藤村 「本当ですか?」
吉川 「こんなところで嘘を言ってどうするんですか」
藤村 「なるほど。さぁ、それでは環境破壊を止めるための一手として、このオナラの匂いを吸い取ってください」
吉川 「……なんで!?」
藤村 「この袋の中にはそれはそれは臭いオナラが入ってます。これが解き放たれてしまっては環境が汚染されてしまう。自分の言葉に嘘偽りがなければ吸い込んでください」
吉川 「急にバカになった? するわけないでしょ、そんなこと」
藤村 「やはり口ではどうこう言っていても、結局やらないという有言不実行な人間なわけですね」
吉川 「いや、意味がないからだよ。環境破壊ってそういうことじゃないだろ」
藤村 「いいんですか? このオナラが撒き散らされて部屋が臭くなっても!?」
吉川 「よくはないよ。いいですっていう人はいないだろ、でもそれは環境破壊とは何の関係もない」
藤村 「環境破壊はマクロな視点からミクロな視点まで様々な問題がはらんでるんです。私たち一人一人ができるのはこうした小さなことからなんですよ」
吉川 「違うだろ。オナラを吸うのは違う。絶対違う。たとえオナラを吸ったとしても私の身体は浄化機能みたいのがないもの」
藤村 「またそうやってやらない言い訳ですか? あなたがそうやってのらりくらりとしている間に、このオナラはどんどん臭くなってるんですよ?」
吉川 「どういう原理? 袋の中でオナラがどんどん臭くなるの? それ本当にオナラ?」
藤村 「地球環境もそう。一日遅ければそれだけ被害は広がっていくんです」
吉川 「環境はわかるけど。そっちの理屈はまだわかる。でもオナラは勝手に臭くならないでしょ」
藤村 「勝手にはならないです。それは地球だってそう。すべては人間の浅慮によって引き起こされてるんです」
吉川 「一緒じゃないだろ。環境はそうかも知れないよ? それについても私の意見はもうちょっと違うけども今はそれは置いておくとして。オナラは人間の浅慮によって臭くならないだろ?」
藤村 「だったらなんでこんなに臭いんですか?」
吉川 「知らないよ。そこを突き詰める意味ある?」
藤村 「どれもこれも人間の行動によって引き起こされた結果でしょ?」
吉川 「そりゃ確かに健康な食生活とか心がけていればそれほど臭くならないのかもしれないけど、それは個人個人の問題じゃん」
藤村 「そうです。だから我々一人一人が意識して環境問題に取り組まなければならないんです」
吉川 「オナラと環境をシームレスに行ったり来たりするなよ! 全然別の問題だろ。オナラは環境問題じゃなくて健康問題だよ」
藤村 「はい。環境汚染によって健康被害がでるというのは周知の事実です」
吉川 「はい、じゃねえよ! なんでそこ一緒になっちゃってるの。自分で言ってて変だなって思わないの?」
藤村 「かくいう私だって様々なことを我慢してるんです」
吉川 「いいことだと思うよ。一人一人が我慢したり気を使ったりするのは」
藤村 「今だって結構うんこ漏れそうです」
吉川 「何を我慢してるんだよ!? その我慢は環境に対してなにも良い影響を及ぼさないよ。とっととしてこいよ!」
藤村 「あー! メルトダウンしそうです!」
吉川 「環境のために我慢しろ!」
暗転
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