男
吉川 「この間花見やろうとしたんだけど雨でさ。結局次に予定が空くの今週で、もう花見っていうには遅いんだよね」
藤村 「ただ花を見るってだけならギリ行けなくはないけど、花見って感じで盛り上がるほど咲いてはいないな」
吉川 「そうなんだよ。去年も雨だった。俺って雨男なんだよね」
藤村 「そうなの!?」
吉川 「ほら、予定を立てるとだいたい雨なんだよ」
藤村 「雨男だとは思ってなかった」
吉川 「夏だっけ? バーベキューやろうとした時。あの時も雨」
藤村 「雨男だったんだ」
吉川 「そうなんだよ。意外と雨男なんだよ」
藤村 「なぁんだ。俺は吉川はドブ男かと思ってたけど」
吉川 「ん? なに? ドブ男?」
藤村 「まさか雨男だったとはね」
吉川 「待ってくれ。ドブ男ってなに?」
藤村 「え? どうした急に? そんな詰め寄らなくてもいいだろ」
吉川 「詰め寄るよ。なんだよ、ドブ男って」
藤村 「いや、お前が言い出したんだろ。じゃあ雨男ってなんだよ?」
吉川 「雨男は、なんかイベントとかある時に限って雨が降る不幸な体質だよ」
藤村 「なんだそりゃ! 関係ないだろ、気象と体質は。え? お前は天気を司る神のつもりなの?」
吉川 「違うけど、言うじゃん。そういう風に」
藤村 「聞いたことない」
吉川 「聞いたことないの? 雨男って。というか、ドブ男はなに?」
藤村 「ドブの男?」
吉川 「なんだよ、ドブの男って。半疑問形で言うなよ。お前自身がよくわかってないじゃねえか」
藤村 「わからないだろ。砂かけ婆はこんな婆さんですってきちんと言える? なんかわけのわからない砂をかける婆さんじゃん」
吉川 「妖怪みたいなもの?」
藤村 「だろ?」
吉川 「俺は妖怪じゃないだろ。どうみても」
藤村 「だからさぁ。あの人は貧乏神だね、とか。座敷わらしみたいだね、とかいうけど別にその人は人だろ? あいつは貧乏神だからって言われて『えぇっ!? あいつは神様だったのかぁ!』なんてウブなリアクションとるやついる? 気持ち悪くない、そんなの?」
吉川 「じゃあその、そのものじゃなくてそれっぽい人って意味合いで言ってるのね。で、なんだよドブ男って!?」
藤村 「ドブの男?」
吉川 「それがわからねえんだよ! ドブの男って何? 何を指してドブなんだよ! 何をする怪異があったらドブ男なんだよ」
藤村 「俺もドブ男の専門家じゃないからわからないよ。いかにもドブっぽそうならドブ男なんじゃないの?」
吉川 「だからそれはおかしいだろ? なに? 俺のことをいかにもドブっぽそうって思ってたの?」
藤村 「いかにもっていうか。だったらなんで雨男は怒らないんだよ? 自分で自称してたじゃん。雨男だって俺は言われたら嫌だよ?」
吉川 「雨は綺麗じゃん!」
藤村 「いいえ。雨は大気中のゴミとか入ってるし酸性雨とかもあるし全然綺麗じゃないよ」
吉川 「そりゃ綺麗ではないかもしれないけど、ドブよりは綺麗だろ?」
藤村 「ドブだって最近のドブは綺麗なもんだよ? 昭和じゃないんだからさ」
吉川 「だとしてもドブにいいイメージないだろ」
藤村 「雨にはあるの?」
吉川 「雨はギリ恵みの雨みたいなのがあるじゃん!」
藤村 「恵みのドブだと思えばいいだろ。豊穣のドブとか。碧海から生まれしドブとか」
吉川 「ドブにちょっと良さげな二つ名つけてもドブだろ。名前が汚いもん。ドもブも汚い!」
藤村 「よくそんなひどい悪口言えるな」
吉川 「俺が言ってるんじゃなくて一般的なイメージだろ」
藤村 「ドブ男っていうから古臭いだけじゃないの? ドブ男子とか言えば令和でも通じるよ」
吉川 「通じないだろ! ドブ男子に清潔なイメージ一個もないよ。ダンシってつけていいのは清潔なものだけなんだから」
藤村 「ドブに対する偏見が強すぎる」
吉川 「こんなもんだよ、世間一般のドブに対するイメージは!」
藤村 「ドブダンと偏見に基づいた発言」
吉川 「なんだよ、ドブダンて! 略すなよ!」
暗転
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