好み
藤村 「好みの女性のタイプってどんなの?」
吉川 「好みかぁ。あんまりタイプってので考えたことないな。好きになった人が好きって感じだから」
藤村 「それをあえて言うとしたら?」
吉川 「うーん。まぁ、健康的な人がいいよね」
藤村 「健康的ね」
吉川 「そう。痩せてても太っててもいいんだけど、健康の範囲内なら。不健康なまでになっちゃうとこっちが心配になるからさ」
藤村 「ちょっと待って。それは不健康な人はいけないということですか?」
吉川 「どうした? 急に声が一オクターブ下がった」
藤村 「不健康なやつは好まれる資格などない、と?」
吉川 「そんな風には思ってないよ」
藤村 「でも不健康はダメなんでしょ? 不健康なんてね、自分から好んでなってるわけじゃないんですよ。しかたなくなってるのに、それに追い打ちをかけるように嫌だ気持ち悪いとツバを吐くんだ?」
吉川 「ツバを吐いたりはしてないよ」
藤村 「不健康なやつは死ねと思ってるんでしょ」
吉川 「思ってないよ! 話が違わない? 好みのタイプを聞かれたんだよね?」
藤村 「そうだよ」
吉川 「だから強いて言うなら健康って答えただけなんだけど」
藤村 「ほら! でた! 不健康に対するいわれのない中傷」
吉川 「してないよ。不健康に対しては何も言ってない」
藤村 「でも嫌いなんでしょ?」
吉川 「嫌いっていうかさ、健康の方がどっちかというと好みって言うだけで」
藤村 「不健康はどっちかというと地獄に落ちて欲しい?」
吉川 「そんなどっちはないだろ! どっちの片方が重すぎる。天秤のバランスが取れてない」
藤村 「不健康な人の気持ちを考えたことあるんですか?」
吉川 「違うだろ。好みのタイプだろ? 好みのタイプなんて、そんなシビアに選別の対象としてあるわけじゃないだろ。だいたい俺の好みじゃなかったからといってその人の価値が下がるわけじゃない。俺が言ってるだけなんだから」
藤村 「だったら不健康な人でも大手を振って生きてていいってことですか?」
吉川 「いいんじゃないの? それを俺がどうこういう権利なんてないもの」
藤村 「でも不健康なんだよ? なんか体液とか垂れ流しながらうめき声を上げて這いずり回ってるんだよ?」
吉川 「ゾンビじゃん。それは不健康とも違うだろ。それが不健康の代表みたいにいうのお前が失礼だろ」
藤村 「そんな気持ち悪いやつと共生できます?」
吉川 「お前が気持ち悪いと思ってるんだろ! お前の視点で差別してるんだよ。別に不健康なのは悪くないよ」
藤村 「悪いは悪いんじゃない?」
吉川 「いや、身体は悪いけど、人権的なものは変わらないだろ」
藤村 「ふぅん。人権ね。好みのタイプでもないのに」
吉川 「こっちがおかしいみたいなスタンスで言ってるけど、お前の方が問題ある発言してるからな?」
藤村 「じゃあブスでもいいわけ? とんでもないブス。100m先からでも判別できるくらいのブス。ただし健康」
吉川 「なんだよ、その問いは。答えたくないよ。どっちに答えても語弊がありそうだし」
藤村 「ブスとは口を利きたくない?」
吉川 「全然そんなこと言ってない。他人の容姿に対してそんな風に思わないよ」
藤村 「不健康は殺そうとしてるのに?」
吉川 「殺そうとしてないよ! 不健康は俺がジャッジする問題じゃないだろ。医療の領域だよ。ブスかどうかはお前が勝手に決めてるだけだろ」
藤村 「俺はブスだって好きだもん」
吉川 「そういう問題でもない。根本的に失礼なんだよ」
藤村 「まぁ、今のは前フリで、本命は嫌いなタイプの話。これで盛り上がろう」
吉川 「話題が不健康!」
暗転
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