ぺてんし

理性

吉川　「もう諦めてるんだけどさ、年取って余計太りやすくなったよね」

藤村　「そうみたいだね。若い頃に痩せてた人もお腹が出たりするし」

吉川　「なんか食べ過ぎちゃうのかな。酒のせいもあるんだろうけど」

藤村　「人によるとしか言えないなぁ。私は太ってないし」

吉川　「そうなの？　なんかコツとかある？」

藤村　「えーと、それはやっぱり人によるんだよね。適性があるって言ったらいいのかな。ある人とない人がいて、たまたま私はあったんだけど」

吉川　「そういうのあるの？　なにが？」

藤村　「理性なんだけど」

吉川　「理性。え？　理性があるって言ったの？」

藤村　「そうそう。私はたまたまあったんだけど、人によっては最初からない人もいるから、一概にこうとは言えないよね」

吉川　「理性がないっていう意味？　太ってる人は？」

藤村　「そうだね。これはもう人によるから」

吉川　「あるよ！　理性はあるよ。なんだよ、人それぞれみたいに言いやがって。理性くらいあるよ！」

藤村　「いや、どうだろ？」

吉川　「どうだろ、じゃないよ！　なんかちょっと気を使った言い方でものすごく鋭利な暴言を吐きやがって。理性はあるだろ、誰にだって」

藤村　「えー。その身体で？」

吉川　「半笑いで言うなよ！　太ってるやつはみんな理性がないって断言したの？　他に理由あるだろ」

藤村　「でも一般論として理性があったら太る前に気をつけると思うんだけど？　みっともない姿になりたくないなって」

吉川　「大きなお世話だよ！　多少太ってるくらいでみっともない姿って言わなくていいだろ」

藤村　「途中で気づかなかったの？　太りかける段階で『あれ、太りかけてるな？』って」

吉川　「気づいてたけど、そう簡単にはいかないだろ」

藤村　「あぁ、そっか。理性が」

吉川　「あるよ！　理性はあるよ！　理性以外でも様々な要因があるんだよ！　人を欲望をコントロールできない怪物みたいに言うなよ」

藤村　「理性を持って太ろうと決断したのならそれでいいんじゃない？」

吉川　「決断してるわけじゃないんだよ。理性はあるけど、それとは別の話で太ってるんだから」

藤村　「その太ってる間に理性はどこにいっちゃってるの？」

吉川　「他のところで使ってるんだよ！　理性の活用場所は多いから！　様々な場面で活躍してるんだから」

藤村　「え。そんな使用量制限みたいなシステムのある理性なの？　通信制限みたいな？」

吉川　「違うけど、他に色々忙しくてどうしても太るとかは後回しにすることあるだろ！」

藤村　「極わずかしか理性が働いてないってこと？」

吉川　「そういう言い方も失礼すぎるだろ！　それなりにあるよ。でもストレスとかもあるから！　ストレスは理性でどうにもならないだろ？」

藤村　「そういうものなのかなぁ？　ちょっと理性のある身からするとピンと来ないんだけど」

吉川　「俺だってあるよ！　理性のない身みたいな言い方やめろ。あともうちょっと他者に配慮することを覚えろ」

藤村　「そうかぁ。でも痩せる方法だけどさ、これは簡単で。人間の身体の中で一番カロリー消費が多い場所ってどこだか知ってる？」

吉川　「カロリー消費？　なんだろ、ジョギングとかするから足かな？」

藤村　「実はね、調べればわかると思うんだけど脳なんだよ」

吉川　「へぇ～」

藤村　「だから脳を使えばちゃんと痩せるよ」

吉川　「脳を使ったことない人みたいに言うなよ！」

暗転