坊主憎けりゃ

藤村 「袈裟っていいよな?」


吉川 「ケサ? なんのケサ?」


藤村 「お坊さんがつけてる」


吉川 「あー、袈裟! いや、そもそもどの部分が袈裟なの?」


藤村 「俺もそうだった。最初はみんなそう。どれが袈裟なのかもあんまりわかんないんだよな」


吉川 「だよな。お坊さんて結構厚着だもんな」


藤村 「宗派によっても色々あるみたいだし、決まってるのかもわからない。俺もまだ袈裟にわかだから」


吉川 「袈裟にわか。まず袈裟に対するジャンルがあるかどうかも疑わしいけど」


藤村 「お坊さんが着物っぽい袍服とか道衣とか着て、その上に彩りを加えるワンアイテムみたいな感じのやつが袈裟」


吉川 「あの巨大なサコッシュみたいな」


藤村 「そう、それ! 何も入らないサコッシュ」


吉川 「何も入らないの? ポケットとかもないんだ」


藤村 「わからない。あるやつもあるかもしれないけど、そういう用途じゃないから。あくまでファッションアイテムだから」


吉川 「ファッションアイテムなの? もっと由緒みたいなのがありそうだけど」


藤村 「ほぼファッションだね。ファッションでスキンヘッドにしてるし」


吉川 「その考え方、お坊さんに怒られない?」


藤村 「お坊さんだから怒らないよ。もし不快だとしても袈裟と髪型でまだツーアウトだから。仏の顔ってスリーアウトまでOKなんで」


吉川 「仏の顔色うかがって地雷踏んでいくやつ罰が当たると思うんだけど」


藤村 「それより袈裟だよ。一般人はあんまり手にしない。ユニクロにもないし」


吉川 「ないだろうな。あっても買うかと言われたら絶対買わない」


藤村 「かといってエルメスの袈裟とかもないわけじゃない?」


吉川 「高い安いの問題じゃないからな。袈裟を着ようと思ったことない」


藤村 「だろ? そこなんだよ。でもファッションアイテムとして着目するとかなりいいの」


吉川 「ちょっとお前の熱量についていけてないんだけど」


藤村 「まずワンショルダーでアクティブな印象がでるじゃない?」


吉川 「ワンショルダーって言っていいの? 袈裟を? お、ワンショルダーでおしゃれだねって視点ある?」


藤村 「しかも膝上25cmくらいだから。かなりセクシーに着こなせる」


吉川 「膝上。まず膝を出しているお坊さんを見たことないから」


藤村 「別に我々はお坊さんじゃないから素足に袈裟でもいいわけだ。裸袈裟でもOK」


吉川 「OKなの? お前の出すOKにどれほどの権限があるのか不安だよ。袈裟のみってファッション許されるの?」


藤村 「ファッションて許されないギリギリを狙うのが時代を牽引することなんで」


吉川 「ちょいちょいファッショニスタ目線の発言が鼻につくな」


藤村 「だからお坊さんと切り離して袈裟だけで見ると、相当ファッションとして強いよ」


吉川 「お坊さんと切り離すことできるの? 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの袈裟を」


藤村 「それが一番時代遅れ。どんなに憎い坊主がつけてても袈裟の可愛さは別で評価しなきゃいけないから」


吉川 「袈裟の可愛さ。袈裟にそこまで注目したことなかったから可愛いっていう軸があるのに驚いてる」


藤村 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって言葉が袈裟の自由度を損なってると思う。廃止すべき。その言葉で得する人誰もいないし」


吉川 「確かに誰も得しないけど、誰かが得するために作られてることわざの方が問題だよ」


藤村 「袈裟をワイルドにさっと着こなせるようになってこそ新時代って気がしない?」


吉川 「まだ俺はその時代を迎える準備ができてないが」


藤村 「どんなにお坊さんが憎たらしくても袈裟とは別。お坊さんの印象で袈裟を悪く言うのは差別だから。袈裟はいい。悪いのは坊主!」


吉川 「いや、お坊さんも悪くないだろ。なにかあったのか?」


藤村 「ほら、お坊さんて菜食でしょ? ベジタリアンとかヴィーガンとかのだいたい炎上してるやつらと一緒の」


吉川 「そこを一緒にするの一番ダメだろ。同じフォルダにしまうなよ」


藤村 「もっと肉を食べて豊かな心を持って欲しい。坊主肉食え、今朝また肉で!」


吉川 「朝っぱらから!?」



暗転

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