影響

藤村 「もう本当に、若い頃はもろに影響を受けてましたね」


吉川 「ははは。話は聞いてるよ。藤村くんが好きだったというのはね」


藤村 「こうして対談を組んでもらって、まず最初にそれを伝えたかったんで」


吉川 「なんつーの? 俺らもさ、シーンを必死で駆け抜けてきただけなんで。別に歴史に名を残そうとか思ってやってたわけじゃないんだよね。ただ気づいたらレジェンドなんて呼ばれてさ、若い世代に芽を撒いてたわけだ」


藤村 「本当に影響は受けましたね。デビュー当時の音源を聞くともう恥ずかしくなるくらい」


吉川 「ま、でもそうやってさ。今度は君たちが次の世代に影響を与えて、そうやって続いてくいもんなんだろうな」


藤村 「確かにそうですね。やっとボクも吉川さんの手から離れて自分らしさが出てきたかなって感じなんで」


吉川 「そんなことないよ。最初に藤村くんを聞いた時から『こいつは新しいな』って思ったもん」


藤村 「えー、そうですか? だとしたら吉川さんの影響も大したことなかったんですね」


吉川 「あ、ん? 影響はあっただろ。新し目だけど影響下にあるなって感じだったから」


藤村 「どうですかね? よくよく考えてみると影響って言ってもねぇ」


吉川 「いや、あっただろ。相当に強いやつが。いまだに。いまだにな!」


藤村 「それはないです。もう今は一切の影響を受けてません。吉川なんて存在するの? ってレベルで」


吉川 「なんで急に存在疑っちゃうんだよ。影響は受けたんだろうが」


藤村 「もう受け終わったんで」


吉川 「影響って受け終わるものじゃないだろ! なに勝手に終わらせてるんだよ」


藤村 「もういつ死んでもらっても平気ですから」


吉川 「そんな言い方ないだろ! 過去にでも影響を受けたのなら生きてては欲しい感情くらいあるだろ」


藤村 「あるかなぁ? 実際に死んでもらわないとちょっと実感はないです」


吉川 「実際に死んだらもう終わりなんだよ! 『ありました』って報告されてもリアクション取れないだろ」


藤村 「だったら逆に永遠に生きてもらっても大丈夫です」


吉川 「それはできないんだよ! 俺の判断で『どうせだったら永遠に生きるか』って選択肢はないんだから! 現代の科学力ではまだ無理だよ」


藤村 「じゃあ、今みたいに死んだも同然を維持してもらえれば」


吉川 「今は別に死んだも同然じゃねえぞ!? 活力に満ち溢れてるよ! 今度45周年やんだよ!」


藤村 「それ、客の方は生きてるんですか?」


吉川 「生きてるよ! まだギリで生きてるよ! 確かに結構死んでるのもいるけど、若い客層だっているんだよ!」


藤村 「それは何しに来るんですか?」


吉川 「音楽を聞きにだよ! 当然だろ。他に何しに来るんだよ!?」


藤村 「ほら、でも病院の待合室とか何しに来てるかわからない老人ばっかりじゃないですか」


吉川 「一緒にするなよ! あの老人たちだって薬をもらったり健康状態をチェックしたりしてるんだろ! 老人に対しても想像力を働かせろよ!」


藤村 「ざっくり言えば生前葬みたいな感じですかね」


吉川 「そんなざっくりの仕方ないだろ! ちょっと納得感のあるざっくりをするなよ! 思ってたとしてもそこをざっくり分けちゃダメ! ある程度キャリアのあるエンタメなんて全部ざっくり言えば生前葬っぽくなっちゃうんだから! みんな傷ついてるぞ、その発言に!」


藤村 「でも吉川さんは永遠に生きるから平気ですよ」


吉川 「勝手に決めるなよ! どうした? お前にその権限あるの? 言ってることおかしいと思わないのか?」


藤村 「ほら、よく言うじゃないですか。優れた芸術は永遠に生き続けるって」


吉川 「おい……。なんだよ。緩急激しすぎてちょっと泣きそうになったよ」


藤村 「しつこく鬱陶しいゾンビみたいなもんですね」


吉川 「絶対道連れにしてやるからな!」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る