能力

藤村 「迂闊だったなぁ? お前の能力は見せてもらったぞ。なるほど、なかなか厄介な能力だな」


吉川 「まさかっ!?」


藤村 「おそらくお前の能力は、太ももを二回擦ることにより体内の新陳代謝を活性化させ、腕力及び脚力の増幅、さらに毛艶も良くなるというあたりではないか?」


吉川 「……全然違うけど?」


藤村 「そう答えるだろうな。敵に能力を知られてしまっては圧倒的に不利になる。私でもそう答えるさ」


吉川 「いや、なに? 太ももを擦るって?」


藤村 「しただろ! 見てたぞ」


吉川 「した、かなぁ? ただかゆかっただけじゃないか」


藤村 「なるほど。全て読めた。つまり太ももを二回擦ることで該当部位のかゆみを解消し毛艶が良くなるというわけか」


吉川 「それは能力じゃなくない? ただかゆい人でしょ。一般的に誰でもかゆかったらそうするよ。そもそも毛艶ってなんだよ? 変わってないよ」


藤村 「変わってない? 気のせい? なんか毛先が遊んでる感じ出てるし」


吉川 「バトルの最中に毛先を遊ばせないだろ。完全に気のせいだよ」


藤村 「どこまで合ってた? 腕力と脚力は?」


吉川 「それも違う。何を見てそう言ったの?」


藤村 「雰囲気? 上がってるっぽいなって」


吉川 「何も見破れてないじゃん」


藤村 「じゃヒントだけでもいい?」


吉川 「出さないよ。敵に能力を知られたら不利になるって自分で言っただろ。なんでヒントあげちゃうんだよ」


藤村 「ふふふ、今のは冗談さ。すべてわかってるんだよ。お前の能力は指で印を結ぶことにより血糖値の急上昇を抑え左乳首の感度が10倍になり5秒先の相手の行動を先読みする能力だな」


吉川 「待てよ。色々待てよ。おかしさを釣瓶打ちしてくるんじゃない。なんだよ、乳首の感度って」


藤村 「左乳首な」


吉川 「なってないよ! 勝手なこと言うなよ、気持ち悪い」


藤村 「じゃあなってないという証拠を示せよ」


吉川 「なんでだよ! 関係ないだろ。だいたい5秒先の相手の行動を先読みする能力ならもう感度のくだりはいらないだろ」


藤村 「強い能力には代償が必要だからな」


吉川 「代償なの? 乳首の感度をリスクとして背負って能力を使うわけ? 最低だな」


藤村 「本当になってないのか、左乳首の感度が10倍に?」


吉川 「そっちにこだわるなよ! どう考えてもフォーカスを当てるのは行動先読みの方だろ! むしろその前の段階は別にいらないよ。なんだよ血糖値の上昇って」


藤村 「急に上がると眠くなっちゃうから」


吉川 「見破れるの!? あいつ今血糖値上がってるな、とか外見でわかるもの? それがわかる能力なの?」


藤村 「どこまで合ってる? どっち乳首かだけでも教えて」


吉川 「どこまでも合ってないよ。一つも! 乳首は無関係。先読みでもない」


藤村 「あー、違うのか。なら消去法により残りは一つしかない」


吉川 「候補の中に乳首の感度も入ってたわけ? なんで入れたの?」


藤村 「ズバリ、お前の能力は特定のヨガのポーズを取ることにより、インナーマッスルを鍛えぽっこりお腹を解消する能力だ」


吉川 「それはヨガの能力だろ。特殊能力でもなんでもない。宣伝文句だよ」


藤村 「かすってる?」


吉川 「かすってないよ! ヨガのポーズ自体したことない」


藤村 「今のは捨てネタだから」


吉川 「なんだよ、捨てネタって。当てる気あるのかよ」


藤村 「本当はもうわかってる。それは時間に関係ありますね? はい、いいえ、部分的にそう?」


吉川 「アキネーターみたいに探ってくるなよ! 部分的にそうだよ!」


藤村 「完全にわかった。お前の能力はバナナを食べることにより時間の認識を緩やかにし、ラーメンなど塩分濃度の高いものを食べてもカリウムのおかげで汗や尿として排出することができる。あと乳首もビンビン」


吉川 「時間の扱いが小さい! もうそれは時間に関する能力じゃなくバナナに対する健康情報だよ! あと付け足すな、乳首を。雑に!」


藤村 「多少違ったとしても誤差の内だ。その程度の能力なら私の能力には太刀打ちできまい」


吉川 「お前は一体どんな能力なんだ!?」


藤村 「ふふふ。惨めなものだな。よかろう、教えてやる。知ったところで手も足も出まい。私の能力は食前にこのサプリメントを摂取することで肝臓の働きを活性化させ数値を大幅に下げる能力だ!」


吉川 「ただの健康オタク!」



暗転

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