藤村 「健康診断の結果がよくなくてさ。思い切って禁酒を始めようと思ってるんだ」


吉川 「そっか。色々とガタが来る年齢だもんな」


藤村 「でも続くかどうか心配だよ。俺って自分に甘いところがあるし」


吉川 「禁酒かぁ。付き合いとかもあるからなかなか難しいよな」


藤村 「その点お前はすごいよな。ストイックだし。禁面白もずっと続けてるじゃん?」


吉川 「禁なに? え? 俺が?」


藤村 「知り合ってから一度も面白いこと言ってるのみたことないもん」


吉川 「禁面白? してないけど」


藤村 「俺だったら絶対一つや二つ言っちゃうと思うけどね」


吉川 「言ってると思うよ。一つや二つと言わず、割と盛り上がることもあるし」


藤村 「いや、一回もない。一度たりとも面白いことを言ってないよ。徹底してる」


吉川 「あ、そ。面白くなかったんだ。別にそんなことを指摘される筋合いはないけど」


藤村 「ストイックだもんなぁ。あと禁モテも続けてるじゃん?」


吉川 「なにそれ? どういう意味? あんまりいい意味じゃなさそうに聞こえるんだけど?」


藤村 「ほら、人から好かれないことを貫いてるよね。周りでお前のこと好きだっていうやつ一人もいないもん。普通は多少なりとも好かれてしまうはずなのに」


吉川 「そんなことないと思うけどな!」


藤村 「いや、全員が薄っすら嫌いだから」


吉川 「だとしてもそれを本人に言ったら傷つくだろうが!」


藤村 「普通ならな。でも吉川は禁モテを続けて成し遂げてるんだから、これはもう称賛に値するよ」


吉川 「成し遂げてねえよ! そこを目指したことは一度もなかったよ」


藤村 「あと禁気持ち悪くない」


吉川 「なんだよそれ! なにの禁だよ? 気持ちいいのか悪いのかもわからない」


藤村 「気持ち悪くないってことがないでしょ。いつ会っても」


吉川 「気持ち悪いってこと? 常態で気持ち悪さを維持し続けてるってこと? そんな努力をするやつがいると思うか?」


藤村 「普通だったらどこかで『あれ、今日はそんなに気持ち悪くないな』って瞬間が訪れちゃうと思うんだよ。でもいつだってちゃんと気持ち悪い。新鮮に気持ち悪さが目に飛び込んでくる」


吉川 「ちゃんと気持ち悪いって言葉があるかよ! してないよ! どっちかというと気持ち悪くないように努めてるよ!」


藤村 「いいや、気持ち悪くなくないです」


吉川 「反語の反語で今どっち面なのか分かりづらいんだよ!」


藤村 「分かりづらい時は鏡を見れば」


吉川 「なるほど、それで気持ち悪いなって、失礼すぎるだろ! そんなに気持ち悪くないよ! 自分にとっては慣れ親しんだ姿だよ」


藤村 「あと禁金メダル」


吉川 「言い方で面白がってるだけだろ! 金メダルは俺に限らずほとんどの人が取ってないよ! お前だって禁金メダルだろ!」


藤村 「禁きゅん」


吉川 「意味がわからないよ! きゅんってなっちゃダメなのかよ。ならないよ、いい年こいたおっさんが!」


藤村 「禁新春シャンションンショー」


吉川 「言えてないだろ! シャンソンショーだろ! 禁新春サンション……。もういいよ!」


藤村 「禁近畿地方は?」


吉川 「行ってないけど! 近畿地方に用事がないだけだよ! 別に避けようと思ってないし誰だってそうだろ」


藤村 「俺は大阪行ったんで」


吉川 「そりゃ行く人もいるだろうよ! でも『あぁ、禁近畿地方を破っちゃったな』って思いながら行く人はいないよ!」


藤村 「禁近親相姦とか」


吉川 「それはもう禁だよ! 最初から禁! 禁じゃない人の方がやばいだろ! 一般的にどこに行っても禁なんだよ!」


藤村 「でも俺にとっては一番きついのは禁吉川だな」


吉川 「どういう意味だよ!? ふざけんなよ!」


藤村 「どうしても会いたくなっちゃうもん」


吉川 「きゅん!」



暗転

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