どうする?

藤村 「なぁ、もし俺が未来人でこの先に起こることをすべて知っていて、人類が犯す過ちを干渉せずに観察しているという存在だったらどうする?


吉川 「何だよ急に? 別にどうもしないよ」


藤村 「わかってるんだよ? この後世界に何が起こるかをすべて」


吉川 「じゃあ聞くんじゃないの? 戦争とか災害とかがあるっていうなら。他のことはあんまり聞いても役に立ちそうにないし」


藤村 「いや、干渉はしないから教えることはできないんだけど」


吉川 「だったら何も聞かないよ。なんだよその質問は」


藤村 「お前こそなんでそんなに投げやりなんだ?」


吉川 「そんなわけないからだよ。どこから出てきたんだ未来人の設定、急に。今までなんにも言わなかったのに」


藤村 「タイミングは別にいいじゃん。もしそうだとしたらって話だから」


吉川 「もしもなにもないんだよ。違うんだから考えるだけ無意味だろ。だいたい何も教えないんだったら俺がなんて答えたって一緒だろ」


藤村 「そうなんだけど。じゃあもしさ、俺がある国の王子で王位継承権を持っていて、つかの間の自由を味わうためにこの国にお忍びで来てる存在だとしたらどうする?」


吉川 「どうもしないよ! 面倒くさいこと聞くなよ」


藤村 「なんだよ、面倒くさいことって!?」


吉川 「どうでもいいだろ。お前は王子じゃないから」


藤村 「だからもしの話でさ」


吉川 「もしでもなんでもその取ってつけたような嘘に対してなんで俺が頭を悩ませないといけないんだよ」


藤村 「友達だろ? そんな言い方なくない?」


吉川 「友達だからそれが嘘だってわかってるんだよ。その嘘を突き詰めたところでどこにもたどり着かないだろ。もっと建設的な話をしろよ」


藤村 「だったらもしさ、お前に借りてたスラムダンクにコーヒーこぼしちゃったって言ったらどうする?」


吉川 「おい、お前マジかよ!? ふざけんなよ!」


藤村 「え、急に何?」


吉川 「何じゃねえだろ! 今あの昔のコミックのやつあんまり売ってないんだけど? ちゃんと新しいの買って返せよな!」


藤村 「なんでそんな食いついてきたの? 未来人の時より」


吉川 「だって未来人は嘘だろ!」


藤村 「スラムダンクはそうじゃないの?」


吉川 「は? 嘘なの?」


藤村 「いや、だから未来人もそのくらいの勢いで来るべきじゃない?」


吉川 「いま未来人の話しは関係ないだろ! お前さ、だいたいマンガの扱いが雑なんだよ! この間のやつもカバーがすごいペローンてなってたから!」


藤村 「あの、王位継承権に関しても雑だなとか思わない? そんな態度で王位を継げるのかって? 一度もそんな剣幕にならなかったけど」


吉川 「話をすり替えるなよ! スラムダンクのは本当だろ?」


藤村 「ちなみに何をもってして本当だと判断してるの?」


吉川 「そんなのリアリティだろ! 未来人とか王族とかなわけがないだろ! でもスラムダンクはお前の普段の行いからやりかねない。っていうかやってるんだろ?」


藤村 「それこそ一方的な決めつけじゃん」


吉川 「なに? 嘘なの? スラムダンク無事?」


藤村 「いや、無事かどうかって言われても。本当にちょっと角っこにコーヒーが付いただけで」


吉川 「ほらやっぱり! 本当じゃねえかよ!」


藤村 「あの、印刷のところまでは沁みてないから」


吉川 「そういう問題じゃねえんだよ! 買って返せよ! 旧コミック版な!」


藤村 「なんでそんなにスラムダンクにだけ拘ってるんだよ」


吉川 「お前が言うなよ! やった側が言うセリフじゃねえだろ!」


藤村 「わかったよ。ちゃんと買って返すし」


吉川 「あとお詫びになんかおごって」


藤村 「いいけど。じゃコンビに行く?」


吉川 「あれがいいや。あのポテチのさ、あったじゃん? この間のすげえ美味かったやつ」


藤村 「あー。あれ、もうすぐ生産中止になるんだよ」


吉川 「へぇ……」



暗転

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