エイプリルフール

吉川 「エイプリルフールで嘘をついていいっていうのは午前中だけって言われてるんだ」


藤村 「え。本当? それもエイプリルフール?」


吉川 「いや、これは本当。地域によって違いはあるんだけど、イギリスではそうなってるんだ」


藤村 「はいはい。嘘確定! キリギリスがそんなこと決めるわけがない」


吉川 「キリギリスじゃなくて。イギリスね。国の」


藤村 「はい、お疲れ様でしたー。嘘でございます。紛れもない嘘でございます。そんな国あるわけがありません」


吉川 「いや、あるだろイギリスは」


藤村 「何だその名前! それは国じゃなくてリスの種類だろうが! シマリスとかエゾシマリスとかの仲間だろ!」


吉川 「え、イギリス知らない?」


藤村 「おい、しつこいな。まだ突き通す? アニメじゃないんだからリスの国なんてないだろ! 飲んだくれのモモンガおじさんとかでてくるのか?」


吉川 「リスの国じゃなくて。嘘だろ。じゃああの国は何ていう国なの? フランスの北にある島国。あれ、世界史でも無視できない重要な国だろ」


藤村 「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国のこと?」


吉川 「正式名称は知ってるんだ。それを知っててイギリスを知らない?」


藤村 「じゃあ何か? お前はドイツのことをゲルリスとか呼んでるの? スペインのことをパエリスとか呼んでるわけか? めちゃくちゃ言うなよ!」


吉川 「語調の強さで説得力を出して聞いたことないことを言ってくるな」


藤村 「国の名前で嘘を付くならもっと国の名前っぽいのを出してこいよ。アメリカとか。イタリカとか。オーストラリカとか」


吉川 「リカ!? 違うけど? オーストラリカって国はないよ?」


藤村 「あるよ。あれ、ひょっとしてオーストリカとオーストラリカは同じ国だと思ってる? 全然場所が違うのに。地理が苦手な人にありがちなんだよ」


吉川 「認めないの!? 認めない上にこっちが勘違いしてるていで詰めてきた? 地理が得意な人はオーストリカとか言わないだろ。オーストリア。リア!」


藤村 「なに? その、細かいネイティブの発音と違うからって文句つけてきてるの?」


吉川 「あくまでこっちがおかしい感じを崩さずにいるな。え? なに? エイプリルフールだからそうなの?」


藤村 「なにが?」


吉川 「そうじゃないのか。バカでした、っていう嘘じゃないの? 素のバカで押し切ろうとしてるの?」


藤村 「失礼なこと言うなよ。こちとら賢いよ」


吉川 「賢いよって断言してくる人間に知性の欠片も感じないんだけど」


藤村 「お前が変な名前を国みたいに言ってくるからおかしくなったんだろ。クリスマスも国の名前だと思ってる?」


吉川 「思ってないよ。リスがつけば国だとも思ってない」


藤村 「国の名前って法則性あるから。フィンランドとか、ニュージーランドとか、インドとか」


吉川 「インドそこに入った!? ンドで? ンドを頼りにその仲間に馴染めるものなんだ?」


藤村 「オランドとか」


吉川 「オランダ微妙に寄せてきたな! ネーデルランドとは言うけども」


藤村 「カンド」


吉川 「なにそれ? どこの国?」


藤村 「アメリカの上の」


吉川 「カナダをカンド!? 東北の山深い地域のおばあちゃんの方言? ゴリ押すにもほどがあるだろ」


藤村 「地理は比較的得意な方だから」


吉川 「どこに自信を持つ要素あった? 比較的って何と比較したんだ一体」


藤村 「なにかわからないことがあったら遠慮なく聞いてよ」


吉川 「じゃ、エイプリルってどういう意味なの?」


藤村 「猿の一種だよ」


吉川 「エイプだけで判断した? リルは何? 都合よく省略してない?」


藤村 「リルはヒップホップでは小さいって意味だから。小ぶりの猿のことだよ」


吉川 「急にヒップホップに。なんでそこまで自信をもっていい加減なことを言えるんだ」


藤村 「四月中は大体こんな感じなんで」


吉川 「四月バカなのか?」



暗転

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