何か

吉川 「で、おじいちゃんが田んぼを見に行ったら何がいたと思う?」


藤村 「もしかしてワニ!?」


吉川 「ワニ!? ワニがいるわけないでしょ。ワニ、どこから来たの?」


藤村 「オーストラリアとかかなぁ?」


吉川 「違う違う。どこから突然ワニが出る発想を思いついたの? 田んぼだよ? ワニいるわけないでしょ」


藤村 「それはおかしくない? 今の質問形式は、いるわけないものがいて驚いたっていうエピソードのいるわけないものとは何でしょう? って問いかけでしょ? いるわけないものを言ってなんで文句言われなきゃいけないの?」


吉川 「まぁ、そうだけどさ。でもワニは田んぼにいないだろ。それはもう事件だろ。もうちょっといるわけないけど、答えを聞いたらひょっとしたらいるかも知れないというラインを言わない? ワニはさ、もうありえないでしょ。日本の田舎の田んぼに」


藤村 「つまりストライクになるかならないかのギリギリのラインを攻めろってこと?」


吉川 「そういうことそういうこと。それで会話が弾むわけじゃん。ギリギリで変化してボールになるような球筋の答えを聞きたいんだよ」


藤村 「ごめん。ちょっと野球詳しくないからあんまりよくわからないや」


吉川 「お前が言ったんだよ! ストライクのたとえは! わからないやつがなんで例に上げたの?」


藤村 「俺はボウリングにたとえて言ったんだけど」


吉川 「ボウリングに!? ボウリングのストライク? 全部倒す?」


藤村 「そう。全部倒したかな~って思ったら1ピンだけ残ってたような」


吉川 「あんまり会話をボウリングでたとえられたことないからピンとこないけど、でもまぁ、ちょっと惜しい答えを欲してたって気持ちはわかるよな?」


藤村 「うんうん。田んぼでしょ? 絶対いないってわけじゃないんだ?」


吉川 「そう。絶対いないとは言い切れないけど、まずいない。見たらビックリすると思う」


藤村 「人食いワニ?」


吉川 「ワニ!? ワニじゃねえって言ってるだろ!」


藤村 「ワニっていうか人食いワニ」


吉川 「人食いワニはワニだろ! もし答えが人食いワニだったら、さっきのワニの時点で話が展開してたはずだろ?」


藤村 「でもさっきのは人を食わない方のワニだよ?」


吉川 「ワニじゃねえんだって! 人を食うか食わないかのカテゴリのみでジャッジしてるんじゃないんだよ。そもそもワニじゃない!」


藤村 「人食いカバ?」


吉川 「人食い要素がいらないんだわ! 人食いは合ってるけど、さて人食い何でしょうか? って展開になってないだろ? その要素を大事に温存して次に繋げるんじゃないよ!」


藤村 「じゃあ、人を食わないただのカバ!」


吉川 「田んぼ! 日本の田舎の! あともう人食いカバがなんにもかすらなかったんだから、カバのラインはないって判断つかない? もし答えがただのカバだったら人食いカバの時点でもそこに言及してるだろ」


藤村 「わかった! 田んぼってことは、人食い稲!」


吉川 「なんだよそれは! どういう発想だよ! 稲はあるよ、田んぼだから! 稲が人を食うって構造はどうなってるんだよ。植物が!」


藤村 「あるってことは正解?」


吉川 「稲はあるよ! 稲があるかどうかは問題文に含まれてるだろ、田んぼなんだから」


藤村 「やっぱり稲かぁ」


吉川 「違うよ? そこを当てて欲しかったわけじゃないんだよ! そもそもお前が言ったのは人食い稲だろ。なんだよそれは。いないよそんなのは!」


藤村 「え、どういうこと? あってるの? あってないの?」


吉川 「こっちが想定した答えとはかけ離れてるよ。ただ稲はある。そこから説明しなきゃダメか?」


藤村 「ヒントヒント! おじいさんが食われたか食われてないかだけ教えて!」


吉川 「そのヒントだけで微塵でも前進できると思ってるのかよ!」



暗転

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