二択

藤村 「俺とお前って結構性格合わないからな」


吉川 「確かに。全然違うよな。よく続いてるよ」


藤村 「それはきっと、俺が仏のような広い心を持ってるからだと思うぞ」


吉川 「よく言うよ! どっちかというと我慢してる割合は俺の方が多いからな」


藤村 「それも平行線だ。究極の二択のとかだと大体意見が分かれるよな」


吉川 「究極の二択ねぇ。あれだろ? カレー味のうんこかうんこ味のカレーか、みたいなのだろ」


藤村 「そうそう。例えばさ、あのお前の車あるじゃん。ボロいの」


吉川 「ボロいって言うなよ! 愛着あるんだよ。結構ないんだからあのカラーは」


藤村 「まぁ、その愛車ね。あれが大破するけど200万円貰えるのと、何ももらえないけどあの車に乗り続けなきゃいけないのだったらどっち?」


吉川 「待ってくれよ。あの車に乗り続けなきゃいけないってのを罰ゲームみたいに言うなよ。乗り続けたいんだよ、こっちとしては」


藤村 「あのポンコツ。金もかかるよ?」


吉川 「いいんだよ! それも含めて気に入ってるんだから!」


藤村 「でも大破する代わりに200万よ? 中古でもっといいの買えるでしょ」


吉川 「う~ん。そう言われたらそうだけどさ。やっぱり俺は乗り続ける方を選ぶよ」


藤村 「ほら! でしょ? 俺は逆だもん」


吉川 「逆ってお前車持ってないだろ」


藤村 「だからお前のボロ車が大破して200万貰う方を選ぶ」


吉川 「お前にデメリットないだろ! なんでお前の選択の時も俺の車が壊れるんだよ」


藤村 「もう壊れてるみたいなもんだから」


吉川 「余計なお世話だよ。お前が選択する時はお前にリスクがある選択肢にしろよ!」


藤村 「200万貰えてラッキーだなって思ったけど」


吉川 「そりゃそうだろ! 俺だって他人の車が壊れて200万貰えるならそれが一番いいよ」


藤村 「でもお前は乗り続ける方を選ぶんだろ?」


吉川 「フェアじゃなくない? その答えが一致する可能性ないじゃん」


藤村 「じゃあさ、じゃあさ、俺が1万円失う代わりにお前が100円手に入れるのと、俺が2万円貰う代わりにお前が2万円失うのとじゃどっちがいい?」


吉川 「は? いや、だからそれだったら俺が100円手に入れる方だろ?」


藤村 「ほら! 真逆!」


吉川 「いや、真逆じゃなくて」


藤村 「俺は俺が2万円手に入れる方を選ぶもん」


吉川 「そうだろ、そりゃ」


藤村 「やっぱり合わないなー」


吉川 「いや、条件が違うから! 後者だと俺は損だけだろ」


藤村 「そういう損得の問題じゃなくてさ、やっぱりこういうのは気持ちの問題じゃない?」


吉川 「気持ちが入り込む余地がないくらい計算が不平等なんだけど!?」


藤村 「でもお前は前者を選ぶか。それはそれで俺とは意見は違うけど尊重するよ」


吉川 「尊重とかそういう問題じゃないだろ」


藤村 「じゃ100円ね。で、2万。いい?」


吉川 「いい?」


藤村 「100円。これはお前の選択だから。で2万。ほら」


吉川 「ほらじゃないよ。出さないよ」


藤村 「出さないって意味がわからないな。自分のした選択には責任を持てよ!」


吉川 「そもそも選択したくなかったよ! 消去法で選ばされただけだろ」


藤村 「だとしても選んだのはお前なんだから」


吉川 「俺は2万を失う方は選んでないから!」


藤村 「俺だって選んでないけど、1万は出すよ。で100円ね」


吉川 「ね、じゃないよ! 9900円はどこいっちゃったの?」


藤村 「手数料かな」


吉川 「誰の!? なんの? やりたい放題だな!」


藤村 「でも2万もらわないと話が違うんだけど?」


吉川 「その話はしてないよ! 出さねえからな!」


藤村 「ふぅ。わかったよ。でもお前の車どうなっても知らないからな?」


吉川 「伏線回収みたいな脅迫するなよ!」



暗転

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