アップデート

藤村 「時代の流れとかはアップデートしてるつもりだけど、ネットで炎上とかを見て『それってダメだったんだ』と危うく思うことがあるんだよね」


吉川 「そうかな?」


藤村 「違うのよ。別にやってはいないけどさ、悪いことだって意識はしてなかったっていう感じで」


吉川 「確かに微妙なことで炎上することもあるからな」


藤村 「そうそう、そういうこと。あと仲間内でふざけてたらやっちゃいそうなこととか」


吉川 「仲間内はなー、結構俺も人に言えないようなことはしたことがあるから」


藤村 「そりゃ、明らかにヤバいこととかはわかるよ? 私人逮捕とかを見世物にしたりさ」


吉川 「それはもう完全にアウトだからね。わざわざしようとも思わないし」


藤村 「でもちょっとしたこと。雑談でも年齢差があったりしたらさ、あんまり詮索しちゃダメなのかなとか思ったり」


吉川 「あー、今の時代だとあんまりよくないってのは、確かにあるな。ある」


藤村 「あるだろ?」


吉川 「でも最低限相手に敬意を持っていれば、そこまで失敗はしないんじゃない?」


藤村 「それはわかるんだよ。俺だって飲食店で不潔なこととかしないよ。他のお客さんに迷惑もかかるわけだし。でもあまりにも不味かったらさ、金払わないで出てこようって思っちゃうじゃん?」


吉川 「思っちゃわないよ?」


藤村 「そうなんだよ。それって今の時代ダメなんだよね」


吉川 「いやいや! 今の時代じゃなくて。結構歴史として長い事ダメってことで徹底してるよ?」


藤村 「やっぱアップデートしていかないとな」


吉川 「それは貨幣経済が成立した頃にアップデートすべきことだったよ」


藤村 「でもものすごいムカつくやつだったら家に火をつけちゃおうかなとか普通に思うわけじゃん?」


吉川 「普通に!? 普通にという言葉をそこに挟み込む感性が新鮮!」


藤村 「でも今の時代、それはあんまりよくないわけでしょ? 炎上しちゃうし」


吉川 「その炎上はどっちの意味で言ってるの? 物理的なことで?」


藤村 「どうしても気の合わない人だっているしさ。考え方が真反対というか。そういう人を見ると肛門にわさびチューブを差し込んで、3・2・1でギュッと握り込みたいわけじゃん?」


吉川 「初めて聞くタイプの暴力! そんな卑劣な方向にクリエイティブさ発揮してどうするの?」


藤村 「でもポリコレ的によくないってなっちゃったし」


吉川 「ポリコレ的ではないんじゃない? 肛門わさび注入に関しては人種とか国籍とか政治的な理由で配慮されてるわけじゃないから」


藤村 「じゃあお前を殴っていいか?」


吉川 「純粋な暴力! ここにきて捻らず! なんで? ダメだよ」


藤村 「な? ダメだろ。そういう時代なんだよ」


吉川 「時代のせいで見逃されたの? 時代が異なってたら俺は問答無用で殴られてたの? 野蛮すぎない?」


藤村 「俺もこうやってちょくちょくアップデートはしてるんだけど、どこかで失敗しそうで怖いんだよね」


吉川 「しそう。というか今までも問題になってなかっただけで相当やらかしてそう」


藤村 「よくそんな嫌なこと言うな? いまどきその発言はありえないぞ?」


吉川 「矛先がこっちに来た!」


藤村 「あんまり俺がおかしなこと言ってたって吹聴するなよ? 時代的にそういうのもアウトだからな?」


吉川 「時代を笠に着て脅迫してきた。アウトとかセーフとかじゃなくて刑事罰案件」


藤村 「わかってるの? 今の時代は口封じのために痛めつけるのはギリありなんだからな?」


吉川 「そんな時代はない!」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る