別にいいだろ

藤村 「ホントにさ、最近の若いやつら、全然覇気がないんだよな」


吉川 「わかる。なにがやりたいのかとか全然言わないよね」


藤村 「聞いても響かないの。最初、俺だけ嫌われてるのかと思ったら誰に対してもそうだって聞いてさ。もう意味わかんねえよ」


吉川 「誰かと真剣に関わるみたいなのを拒絶してる気がするんだよな」


藤村 「それ! なにかに真剣になった経験とかないんじゃない? だから怖がってるんだよ」


吉川 「休日何してるかって聞いたら、一日中ぼーっとVチューバーの動画見てますとか言って。あんなの何の内容もないだろ」


藤村 「いや、それは別にいいんじゃない?」


吉川 「え、あぁ。まぁ、別にいいけどさ」


藤村 「それによって救われてる人もいるんだから。誰かにとって大切なものを一側面だけ見て否定するのはよくないよ」


吉川 「はぁ。うん。確かにそうかも」


藤村 「でもその割にさ、なんかブームがあるとすぐに飛びついてさ。カードとかギターとか。それですぐ飽きるのね」


吉川 「そうそう! それで言ったら今キャンプ用品の中古すごいんだよ? みんな飽きてるから飽和しちゃってるの」


藤村 「いや、でもそれはしょうがないんじゃない?」


吉川 「え? そうか? でもちゃんと向きあえばそんな風にならないだろ」


藤村 「個人の好みってのはあるから。大事なのは経験すること。経験しなければ何もわからない。経験した上であわないなーと思って手放すのはいいことだと思う。成長につながってる」


吉川 「……うん。まぁ、良く言えばそうかもしれないけど」


藤村 「でもあいつらって傷つくことを異常に恐れるあまり、コミュニケーションをあまりしないから、いざ恋愛とかしようと思っても極端なことをしたりするんだよな」


吉川 「そうか。それが原因なのか。なんか、妙にコミュニケーションにアンバランスさを感じることが多々あるんだけど」


藤村 「普通はちょっとずつ試行錯誤してさ、相手との距離を縮めようとするもんだけど、全然興味ないか、グイグイ来すぎて引かれるか、ちょうどいいってところがわからないんだよ。それはもう経験積んでいくしかないことだから」


吉川 「そもそも恋愛もゲームで済ませようとか思ってんじゃないの?」


藤村 「それは別にいいんじゃない?」


吉川 「え、えー? 恋愛だぞ? ゲームなんてデータだろ」


藤村 「データというのは多くの人の情報を集約させたものだから。納得いかない理不尽なキャラクターはゲームとしてユーザーに受け入れられないし、そういう点では人間相手にするよりも優れてると言える。またゲームというのは適当な困難を克服することで心地よさを与えるというものだから、それを通して恋愛のプロセスを踏んでいくのは理にかなっているし、人間的成長にもつながる」


吉川 「急に真顔で早口になるの怖いな」


藤村 「さらにギャルゲーなどは時代とともに変遷していくもので、その時代時代に適した人格、風俗、社会性などを学べ……」


吉川 「わかった! わかった、ごめん。ゲームで恋愛するのは全然悪くないよね」


藤村 「そうだね」


吉川 「なんか、お前の気に障ること言っちゃったかな? 若者じゃなくて」


藤村 「そんなことないよ。俺はまったく違うから」


吉川 「そ、そうだよね」


藤村 「でもやっぱり全体的に人間力は落ちてると思うよ? テクノロジーが進化しただけ」


吉川 「そうか。あと最近のやつらさ……。あ、でもこれはいいか」


藤村 「なに? どうした?」


吉川 「違う。なんでもない。もっと極端にしょうもない部分の話の方がいいか」


藤村 「ひょっとして俺に気兼ねしてる?」


吉川 「そんなことない! 若いやつらの欠点なんていくらでもあるからね。例えばさ、凶悪犯罪なんかもあるわけじゃん!」


藤村 「いや、それは別にいいんじゃない?」


吉川 「よかねえよ!」



暗転

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