それって何だっけ?

吉川 「そうしたら巨大なマンタが出てきたんだよ」


藤村 「あー、それって何だっけ? あのー、あれか? ……何だっけ?」


吉川 「マンタ? エイの一種。オニなんとかエイだっけな?」


藤村 「あぁ……。知らないやつかも」


吉川 「そうか。ならいいんだけど。で、やっぱり沖縄っていっても一箇所に全部いるわけじゃないから。ジンベエザメとかはまた違うポイントなのよ」


藤村 「あれ、何だっけそれ?」


吉川 「ジンベエザメ? 鮫よ。点々がついてるデカいの」


藤村 「あれ? デカいやつ? じゃあデカくないやつは何だっけ?」


吉川 「知らない。デカくないやつっていうヒントが曖昧すぎて何を指し示してるのかわからないから」


藤村 「あー、知ってる気がするけどわからないな。出てこないや」


吉川 「あ、うん。話進めていい? ジンベエザメのこと?」


藤村 「ジンベエザメ! 何だっけそれ? なんかあったよね?」


吉川 「あったていうか。今話してたんだけど。デカいサメだよ」


藤村 「あぁ。違ったか。それは知らないかも」


吉川 「そっか。で、ジンベエザメが見えるスポットもあるんだよ」


藤村 「ジンベエザメ見えるスポットってひょっとしてアレじゃない? ほら!」


吉川 「知ってる?」


藤村 「えーとなんだっけな? 聞いた気がするんだよ。あれじゃなかった? なんか灯台みたいな」


吉川 「灯台ではないな」


藤村 「あ、違ったか。じゃあ知らないかも」


吉川 「あぁ、うん。いい? で、他にもシュノーケリングで結構見れる場所があって」


藤村 「シュノーケリング! はいはい。あれでしょ? なんだっけ? あのー。あれでしょ?」


吉川 「うん。シュノーケリングはシュノーケリングだよ」


藤村 「だよね! あの、あれだよね? サーフィンみたいなのだよね?」


吉川 「サーフィンみたいなのではないよ」


藤村 「違う違う。サーフィンみたいだけど、サーフィンみたいにしないで、なんかゆったりしてるやつ」


吉川 「ゆったり? サップかな?」


藤村 「かなぁ? サップって何?」


吉川 「サップはサーフボードみたいなやつの上で立ってパドルを漕ぐやつ」


藤村 「あーん。それは知らないや。なにそれ? 何が楽しいの?」


吉川 「何が楽しいかは人それぞれだし、別に俺はサップを楽しいとは言ってないけどね」


藤村 「何の話してるんだよ?」


吉川 「お前が! お前がいちいち脱線させるからだろ?」


藤村 「いや、俺は普通に聞いてるだけだけど」


吉川 「全然話が前に進まないんだよ! 知ってる風の相槌で人の話に食い込んできやがって」


藤村 「そんな言い方なくない? こっちは話を盛り上げようと思って聞いてるのに」


吉川 「知らないんだろ? 知らないことは知らないというスタンスで聞けばいいんだよ。なんでちょっと齧ってましたみたいなスタンスで入ってくるんだよ」


藤村 「知ってるかもしれないだろ!」


吉川 「いや、知らなかったじゃん。お前の知ってるかもの勝率0だろ。もう無理なんだから挑戦するなよ」


藤村 「知りかけてるかもしれないだろ!」


吉川 「なんだよ、知りかけてるって。知るなら俺の話を聞いて知ろよ。お前、今まで食いついた話題の中でちゃんと知ってましたってのがあるの? ないだろ?」


藤村 「あ! あれだよ! ほら!」


吉川 「だから、そうやって結局でないのを繰り返してるんじゃん!」


藤村 「あれ! デカくないのがヤクルトで、デカいほうがビックルだよ!」


吉川 「それの話はお前の持ち込みだろ!」



暗転

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