謙遜

藤村 「でもすごいですよね、本当に。よくあれだけ長く続けられるなって」


吉川 「そんなことないですよ。別に自分からしたら当たり前のことやってるだけなんで」


藤村 「そうですか? すごいと思いますけどね。私だったら絶対にできないなぁ」


吉川 「それほどではないですって」


藤村 「だってあれでしょ? なんか賞とかももらったりしてるんでしょ?」


吉川 「たまたまですよ。たまたまその、評価してくれる方がいたっていうだけで」


藤村 「そうなんですか? 私は本当に凄いと思うんですけど、それほどではないんですね?」


吉川 「う、うん。そう。それほどではないです」


藤村 「特にあれなんかすごかったじゃないですか。去年やったやつ。それほどではなかったかな? そんなすごくはないか」


吉川 「いや、あれはあれでけっこう大変だったんだけど」


藤村 「そんなことないですよ」


吉川 「いや、待って。そっちが謙遜してくるのは変じゃない?」


藤村 「いやいや、そんなことあります?」


吉川 「なんだろ、そっちの褒めに対してリアクションの謙遜だから。そっちが謙遜で来るのはよくわからないし、なんて言えばいいの?」


藤村 「じゃあそんなことはあったんですか?」


吉川 「そんなことって。その言葉だけ自在に操って会話されても内容がないでしょ」


藤村 「たまたまですよ」


吉川 「それも! それも私のさっきのやつ! 変化球として覚えないでよ。謙遜していいのは私の方だけだよ?」


藤村 「でもあの去年の次に出したやつ。第二弾の。あれはさすがにハズしてましたね」


吉川 「そう言われたら謙遜できないんだよ! そんなことないですよって言えないだろ」


藤村 「私の周りもスベってるって話題になってたし」


吉川 「そういうこともあるでしょ! 色々とチャレンジをしてるんだから、毎回ホームランってわけにはいかないよ」


藤村 「そんなことないですよ」


吉川 「いや、あるんだよ! なんでお前がそんなことないって断じるんだよ! 人の作品に対してケチつけてるだけのやつが」


藤村 「いえいえ、これも応援してくださる皆さんのおかげですから」


吉川 「褒めてねえんだよ! なんでお前が謙遜してるんだよ。しかもこっちがまだ使ってない謙遜ワードまで出して!」


藤村 「次のそれほどでもない作品にはもう取り掛かってるんですか?」


吉川 「次の作品がそれほどでもないかどうかは、できてみないとわからないだろ! なんでそれほどでもない前提で作らせようとしてるんだよ」


藤村 「ではそれほどでもあると?」


吉川 「そう言っちゃったら前半で謙遜してた意味がなくなっちゃうじゃん! なんか流れ的にズルズルになってるし!」


藤村 「非常に謙遜されてはいますが、作品が多くの人から愛されているのは事実ということなので」


吉川 「それだよ! そういうことだよ! そういうの言って欲しかった。できるじゃん! いや、もう本当に。これも応援してくださる皆さんのおかげなので」


藤村 「あ、それは私が言ったやつです」


吉川 「そうだけど、いいじゃん! 別に使ってもいいでしょ? さっき聞いた時にいいなって思っちゃったんだから」


藤村 「私のオリジナルのやつなんで。安易にパクらないで欲しいというか」


吉川 「そんなオリジナルって言うほどのものでもないだろ! 他の人だって言ってるよ! ありがちな謙遜の一つだろ」


藤村 「いえ、私はもうこの言葉生み出すのに何年もかけてきたんで。今後もこれ一本で食べていこうと思ってますし」


吉川 「それほどではないだろ!」



暗転

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