異種格闘

吉川 「え、いや? どういうこと? 異種格闘技でしょ?」


藤村 「もちろんです。ではこちらからいきますよ。ドロー!」


吉川 「ちょっと待って。戦うってことでいいんだよね?」


藤村 「もちろんそのつもりです。フィールドのテンションを高め、このカードを守備表示。さらに場に二枚のカードを伏せてターンエンド!」


吉川 「全然意味がわからないんだけど?」


藤村 「そっちのターンですよ」


吉川 「え、攻撃していいってこと? 本当に? 構えたりしなくていいの?」


藤村 「もう場にカードは出てますから」


吉川 「いい? いくよ?」


藤村 「ッダィ! 痛い……。ちょっ! なにするんですか!?」


吉川 「ちょっと牽制しただけだけど」


藤村 「ダイレクトアタックはできないでしょ! 場をよく見てよ!」


吉川 「待ってくれ。これは異種格闘技だよね?」


藤村 「そうですよ!」


吉川 「俺は実戦空手で、そっちは……」


藤村 「カードですよ! 信じられないことするな。見えてないの? 守備表示してるでしょ!」


吉川 「だって異種格闘技だから」


藤村 「異種格闘技ってのはお互いのルールを尊重してやるものでしょうが! ボクシングならグローブを付けるし。あなたの道着だって認めてる!」


吉川 「そっちのルールがわからなすぎて」


藤村 「だから場に出てるでしょうが! 守備表示なんだからまずこのカードを打ち破らないとプレイヤーにダメージが通るわけ無いでしょ!?」


吉川 「いや、殴れば通ると思うけど」


藤村 「意味のわからないことを言わないでよ! 場のカードを無視して殴れるわけ無いでしょ!」


吉川 「異種格闘技だよね?」


藤村 「そうだよ! だからこうして万全のデッキを組んできたんだ」


吉川 「カードって、なんかそのカードを投げたりして戦ったりするわけじゃないの?」


藤村 「はぁ!? そんなことしたら折れたり汚れたりするでしょ! こっちはスリーブいれる時だって手袋してんだよ!」


吉川 「全然わからない。出てくる単語の意味が。これってどうやったら勝つっていうことになるわけ?」


藤村 「プレイヤーのライフを0にしたらに決まってるでしょ!」


吉川 「直接攻撃ってのはなしで?」


藤村 「だから! 場のカードが無くなったり、直接攻撃の特殊効果を使えばできるでしょ」


吉川 「あ、じゃあそれを使います」


藤村 「使いますじゃないんだよ! 場に出してよ! あるの?」


吉川 「いや、用意はしてないですけど。毎日稽古はしてきたんで」


藤村 「じゃあできないでしょ! 効果ってのは概念じゃないんだよ! カードなんだよ!」


吉川 「いや、概念でしょ? ないもん。守備とかも。いつでも殴れるんですけど?」


藤村 「さっき殴ったの、あれ反則だからね。もうあんたはターンエンドだよ。だから俺はこのカードを攻撃表示、さらに特殊効果で攻撃力2倍。そして攻撃1000ごとに一枚ずつカードをドロー!」


吉川 「えっと。守備してます」


藤村 「無理です。闇属性なので」


吉川 「何その属性。一個もわからない。どんどんカード引いてくけど何が行われてるのか全然わからない」


藤村 「もうそっち瀕死ですよ」


吉川 「痛くも痒くもないけど」


藤村 「痛くも痒くもなくても死ぬ時は死ぬんで。それがカードであり人生でもあるわけです」


吉川 「その死も概念でしょ! ダメージ受けてないもん。なんで異種格闘しようと思ったの? 成立しないでしょ」


藤村 「確かに今のルールだと物理が優遇されてますけど、だからこそ戦略と戦術で覆してみせようと思ったまでです」


吉川 「うるせぇ、バーカ!」


藤村 「ぉう、反則! はんそ……」


吉川 「おら! 守備してみろ! カードで!」


藤村 「ぉう、やめ……」


吉川 「うぉら! お前のライフは残りいくつだ!?」


藤村 「グゥ……。イダッ……。もうや……」


吉川 「カードで勝てるんだろうが! なんか出してみろや! んなもん効かんぞ!」


藤村 「樋口一葉を守備表示、そして福沢諭吉でプレイヤーにダイレクトアタック!」


吉川 「それはちょっと効くー!」



暗転

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