闘気

藤村 「な、なんて凄まじい闘気だ……っ!?」


吉川 「ほう、わかるか」


藤村 「伊達にこっちだって地獄をくぐり抜けてねえからな」


吉川 「これはほんの小手調べだ。これならどうだ?」


藤村 「うわーっ! な、なんて凄まじい尿酸値だ!」


吉川 「え、なに?」


藤村 「すごすぎる! 100……200……まだまだ上がってる!」


吉川 「いや、何を見てるの?」


藤村 「尿酸値が!」


吉川 「それは見えないでしょ。尿酸値とか」


藤村 「俺だって伊達に通風で歩けなくなったわけじゃない!」


吉川 「だからって見えるもの? 修行とかでもないし。自分もなったから見えるってものじゃないでしょ」


藤村 「だったら闘気はどうなの?」


吉川 「闘気は、その、感じるやつだから。なんかゾワゾワって来る感じで判断できるんじゃ?」


藤村 「ぬぉおお! 凄まじい尿酸値だ!」


吉川 「やめて! 勝手に人の尿酸値を感じないで! 上がってないでしょ、今は」


藤村 「こんな尿酸値のやつが日本にいただなんて!」


吉川 「世界レベルの高さになってるの? 自覚ないんだけど。そもそも本当にそれが感知できるなら医療において重要な発見になってるんじゃないの?」


藤村 「しかし尿酸値だけで俺に勝てるかな?」


吉川 「勝てないと思う。そもそも尿酸値で勝とうって思って来てないもん」


藤村 「いいのか? どんどん下がってるぜ」


吉川 「え? ホント? 尿酸値が?」


藤村 「生涯年収がよ!」


吉川 「おい、見るなよ! 勝手に人の生涯年収を見て下がってるとか言うなよ! なんで見えてるんだよ」


藤村 「俺だって伊達に天下ってねえからよ!」


吉川 「天下って来た人なの? どっか官庁から? 金融系に強い人ってこと? でも生涯年収はパッと見で見えないでしょ」


藤村 「いいのか? こうしてる間にもどんどん下がってるぜ」


吉川 「やめて! なんとかして! あんたに頼むのもお門違いかもしれないけど。百歩譲って下がってたとしても言わないでよ!」


藤村 「お? おぉ……」


吉川 「何!? 一瞬止まったけどやっぱりまた下がり始めましたみたいなリアクションを取るなよ! 人の生涯年収をアミューズメント化するの絶対に良くない! そもそもどんなシステムで見えてるんだよ!?」


藤村 「じゃあ闘気はどんなシステムで見えてるんですか?」


吉川 「論破するような口調で言ってくるんじゃないよ! 闘気はそもそも俺が言い出したことじゃないから。なんか概念としていつの間にかあったやつだから」


藤村 「生涯年収だって一緒さ」


吉川 「一緒!? だいぶ違うと思うけど?」


藤村 「まだまだ下がってる。しかし、未だに俺の100倍はありやがるぜ」


吉川 「お前はお前でもうちょっと働けよ! そんなに俺は稼いでないぞ? もうすぐ死んじゃうやつなのか?」


藤村 「余命なんてわかるわけないだろ!」


吉川 「それはわからないんだ!? いや、わからないのが当たり前だけど。じゃあなんで尿酸値と生涯年収だけわかってるんだよ」


藤村 「あと闘気も」


吉川 「そうね! 闘気もね! なんか俺が変なこと言い出したみたいに思ってる? わかった。ゴメンよ。闘気なんてないよ」


藤村 「闘気はありまーす!」


吉川 「それない言い方じゃん! 捏造しちゃって自棄になってる言い方!」


藤村 「今度はこっちから行くぜ! どうだー!」


吉川 「どうって……なに? 闘気みたいの出してる?」


藤村 「上がってるだろ!」


吉川 「え……。いや、なんか特に感じるようなやつはないけど。俺はほら、尿酸値とか生涯年収もわからないし」


藤村 「俺の、好感度だーっ!」


吉川 「それは全然」



暗転

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