自虐

吉川 「言ったところで、どうせ俺なんか雑魚キャラだしさ」


藤村 「そんなこと言うなよ!」


吉川 「え」


藤村 「俺はお前の良いところいっぱい知ってるよ! 誠実だし、我慢強い。誰かに見られていなくても自分の決めたことならコツコツとやり続ける」


吉川 「藤村……」


藤村 「そりゃ、確かにこの間の誕生日には『こいつ、プレゼントのセンスないなー』って思ったけど、でもお前は決して雑魚キャラなんかじゃない!」


吉川 「ありがとう。そう言ってくれて救われるよ。ちなみになんだけど、プレゼントダメだった?」


藤村 「今はそんなことどうでもいいだろ」


吉川 「あぁ、まぁそうだけど。気になっちゃって。悪かったな。ただ俺っていざとなると上手くそういうこと言えなくてさ。みんなから反感買うんじゃないかとか、俺の我儘だと思われたらどうしようとか考えちゃって。ダメなんだよな」


藤村 「お前はダメなんかじゃないよ! 普段からちゃんとハンカチを持ち歩いてるし、そりゃ他人を嫌な気持ちにさせておいて自分ばっかり傷ついたアピールするところはあるし、口の中ヨダレだらけなのかやたらとニチャニチャ話すし、すぐに自分の手柄話に持っていきたがるから話ていても今ひとつ盛り上がらないけど、お前のことをダメなんていうやつはお前の本質を見てないんだよ!」


吉川 「藤村、ありがとう。……ありがとうでいいんだよな?」


藤村 「どういたしまして」


吉川 「今の聞いて俺も気をつけるところあったかなって気にはなった」


藤村 「お前はそんな風に思わなくていいんだよ! なんでそうやっていちいち卑下するんだよ」


吉川 「いや、今のはあったんじゃない? 要所要所で刺さったよ?」


藤村 「お前は悪くなんかないよ。だって悪いのはお前の良さに目を向けない奴らの方だろ?」


吉川 「そうかも知れないけど」


藤村 「そりゃ……」


吉川 「ちょっと待って! そりゃの後来るでしょ? いっぱい来るでしょ。しっかりダメージのあるやつ」


藤村 「俺はお前を元気づけようと」


吉川 「そうなんだ。あの、さっきからそりゃの後が結構厳し目のやつで致命傷になってる気がするんだよね」


藤村 「そんなことないと思うけど。じゃあもう言うなってことか。俺なんかにお前に何かいう権利はないってことかな。吉川様に対してお前ごときが! ってことか」


吉川 「全然そうじゃない。じゃあ言って。大丈夫。気合い入れて受け止めるから」


藤村 「俺から見たらいいとこだらけだけどな」


吉川 「そう? 本当にそう思ってくれてるなら嬉しいけど」


藤村 「そりゃ、人が止めても頑固に譲らず自分勝手に振る舞い続けるし、満足に教育も受けてないのかなって思うときもあるし、育ちが悪いからしょうがないのかなと思うこともあるけど」


吉川 「ハァー。ダメだ。完全な防御態勢で聞いてたのに全部貫いてきた。致命傷が。もう褒めがない。一番最初の誰に見られなくてもコツコツ続ける長所すら悪い感じに変換されてる」


藤村 「今のはポジティブな方で、さすがに本音は本人を前にしては言えないけど」


吉川 「もっとあるんだ!? 潜在的に。俺、そんなになんかしてたかな? プレゼントとかのこと?」


藤村 「今そういう話してるわけじゃないから」


吉川 「すごい触れるのすら憚られる空気感が出てる。ゴメン、悪かったよ」


藤村 「言ってるだろ、お前は悪くないって」


吉川 「本当にそう思ってる? そのスタンスで味方陣営に紛れ込んで後ろから撃ったほうが効果的だと判断してない?」


藤村 「やめろよ、そういう発想!」


吉川 「そうだな。ゴメン」


藤村 「お前がここで反省でもしたら、今まで俺が貯めてきたいつか復讐するリストが無駄になるだろ!」


吉川 「償うことすら許されないの!?」



暗転

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